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文化財科学解釈学





 文化芸術の振興の目的は、豊かな人間性を養い、人間の感性を育て、創造力をはぐくむことにあるが、また同時に”人類の真の発展への貢献”、そして文化-いいかえれば文化財-そのものから新たな需要や高い付加価値を生み出し多くの産業の発展に寄与せしめ“質の高い経済活動を実現”していくことでもある。

 文化財は、先人のユニークな発想と哲学によって生み出されたものであり、先人の知恵が凝集している。そして、今日においては、文化財の新たな活用面として文化財に凝集された先人の技術的発想を抽出し、それを現代社会に還元する新領域の研究が重要となる。

 たとえば、折れず、曲がらず切れて美しい日本刀の技術を使って、トンネル掘削マシンを改良した結果、今や日本のトンネル掘削マシンは世界の半分のシェアを保持している。ドーバー海峡のトンネルもこの日本のトンネル掘削マシンで切削されている。刃物の特殊技術は、世界において日本の独壇場になっているのだ。

 このように、文化財に秘められた古代の技法は、もはや過ぎ去って取るに足らない技術というものではなく、現代にも十分活かせる技術的ヒントが眠っているのである。我々は、単なる文化財保護ではなく、文化財に対して科学的なスタンスで接近し、さらに抽出されたデータに現代社会において有用となるべく解釈を加え、”現代に通用する新技術を創出すること”を目的とするのがこの研究の特色であり、目的である。



 この研究では、文化財を修復する過程で獲得される古典技法、すなわち扱っている文化財の製作された当時に援用された技術を、単に修復作業そのもので終わらせるだけではなく、その技術を情報化する事で現代に「活かす」という視点を主眼に置いている。

 特に文化の接触・時代の変革期に登場した新技術の展開に際して登場し、現在は文化財としてしか残されていない技術的な情報に我々は注目する。例えば大原美術館所蔵の児島虎次郎関連作品、ルノアール絵画石版画集をはじめとする西洋絵画、岡山県産の刀剣・陶磁器、19世紀における記録画や記録写真、和本と洋本の折衷的な性格を持つ図書といったものを本研究ではとりあげる計画である。

 これらの中には、技術移転が試行錯誤され、開発された当時ではその機能を十分に果たせず、時代の状況によって発展させる事なく失われてしまった優れた情報を数多く内包している可能性が高い。

 過去の資産である文化財から先人の技術的発想を取り出し、製造業や都市計画といった分野での新技術創生につなげる事ができれば、現代社会に対して大きな貢献となり、過去のさまざまな資産を現代に活かす上でも、一つのモデルを構築することとなるのだ。



 文化財を中核に捉え、「技術文化史的な研究」「科学的な(特に非破壊分析化学による)調査研究」「文化財の構造や製作技法の研究につながる保存修復研究」、さらには、「文化財を画像資料として記録し、新しい観点からの解釈と活用するための方法を研究するデジタルアーカイブ研究」の4領域を一体にして推進する。

 その過程で文化財から先人の技術的発想を取り出し、それを新技術創出につなげて現代社会に還元する。そのために、研究プロジェクトは「文化財技術文化史研究チーム」「文化財科学調査研究チーム」「文化財保存修復研究チーム」及び「文化財デジタルアーカイブ研究チーム」の4チームによって編成され、相互に連携して文化財を後世に伝承-保存修復-していくとともに、文化財を科学解釈学的に研究する。