10月19日(土)、20日(日)の両日にわたって、ゲームジャム高梁2024が、吉備国際大学国際交流会館で開催されました。
ゲームジャム高梁2024ホームページのトップ画像。イラストは、吉備国際大学アニメーション文化学部の空さん。
ゲームジャムは、即席のチームで、週末の2日間など短期間でゲームを制作する集まりです。もともとは大手ゲームメーカーでは発売しないような新しいタイプのゲームを開発することを目指して、インディー(大手メーカーに属さない小企業や個人などのこと)の開発者が集まって始めました。その後、ゲーム開発や情報通信技術(ICT)の研究開発者の育成にきわめて有効な実践的な学修機会を提供することで注目されました。
ゲームジャム高梁は、2015年に、中四国のクリエイター同士、クリエイターを目指す学生・生徒などとの交流を促進し、併せて、こうした学生・生徒に実践的な学修機会を提供するものとして、始まりました。最終的には、クリエイター・エンジニアと関係者のネットワークをつくりあげ、高梁市をはじめとする岡山県や中四国の地域に、デジタルゲーム産業や映像産業をはじめとする新しい産業創出を目指しています。吉備国際大学は、2015年開催の第1回ゲームジャム高梁から後援を続けています。
今回は、2015年から数えて10年目、コロナ禍での中止(2020年)を挟んで9回目のゲームジャム高梁となります。主催は、ゲームジャム高梁実行委員会(世話人:石井聡美合同会社テゴ代表)。共催は、岡山Unity勉強会(会長:面田高章株式会社なのですCEO)、広島Unity勉強会(会長:中奥貴浩さん)、一般社団法人讃岐GameN(代表理事:渡辺大さん)の各地のクリエイターコミュニティです。
ゲームジャム高梁2024の運営には、吉備国際大学アニメーション文化学部やeスポーツサークルの教員・学生が加わったほか、アニメーション文化学部の佐々木洋教授(背景美術・イラストレーション)および松山恭大准教授(コンピュータグラフィクス)が審査員を務めました。
今回は、1日目はあいにくの大雨でしたが、50名以上の参加者を集め、過去最大級の参加者数となりました。中四国各地のクリエイターやエンジニア、専門学校の教員など、実践的にデジタルゲームづくりや教育にかかわる専門家が集まる一方で、岡山市内を中心に、多数の専門学校学生が参加しました。吉備国際大学からも、3名の学生が参加して活躍しました。
ゲームジャム高梁2024開会式。吉備国際大学アニメーション文化学部清水光二学部長の開会宣言。撮影:岡敬祐さん(吉備国際大学心理学部・eスポーツサークル)。
ゲームジャムの注意事項を伝達する山根信二国際ゲーム開発者協会理事・東京国際工科専門職大学講師。山根先生は、石井聡美高梁議会議員(当時)とゲームジャム高梁を開始した一人です。撮影:中奥貴浩さん。
19日朝は、清水光二吉備国際大学アニメーション文化学部長の開会宣言で開始。開会式終了後、「ペラコン」で8つのゲームを選び、開発が始まりました。「ペラコン」とは1枚(ぺら)の企画書による企画コンペのことです。この1枚ぺらの企画書も「ペラコン」と呼ぶことがありますね。9月22日に開催された、ゲームジャム高梁2024参加のためのガイダンス「事前勉強会」で発表されたテーマは「押す」。この「押す」というテーマをもとに、当然ボタンを「押す」ゲームに加え、アイドルを「推す」ゲームまで、さまざまなアイデアがペラコンでは発表されました。
ペラコンでの「推し推しパニック」のプレゼン。アイドルを「推す」ゲーム。
「魔王の押し事」のプレゼン。「押すこと」と「お仕事」をかけたゲームタイトル。どのチームも印象的なプレゼンで開発仲間を募ります。
ペラコンから、アニメーション文化学部の課題解決演習の学生たちが見学し、取材もしてくれました。課題解決演習は、地域密着型大学を目指す吉備国際大学の特徴ある授業の一つで、地域に出かけて、地域課題の解決について取り組む試みや事業等を見学したり、授業のなかでも演習形式で地域課題解決について学生自身が取り組む授業です。アニメーション文化学部の課題解決演習では、社会教育を通じて地域振興を目指すゲームジャム高梁の見学を義務づけています。
ペラコン終了後チーム分け。通信アプリのDiscordで投票後、このゲームを開発したいという人が集まります。制作上の役割がうまく各チームでバランスするように調整。各チームともに社会人1-2名と学生という構成に落ち着きました。
地域課題研修で見学に訪れた学生たちは、「押す」というテーマをめぐって考え出されたアイデアの多様さや、ペラコンでチームを作ってから、見知らぬ同士でもすぐに相談をはじめてゲーム企画をさらに練り込んで制作を進める姿に感銘を受けたようです。
1日目、ゲーム「FruitsFactory」に取り組むチーム「チームカーゴ」の様子。
この日は、夕方に企画発表会が開かれました。ペラコンで示されたアイデアを、その場に集まったメンバーで実現するには、どのような具体的な企画にするべきかなど、実際に制作を進めながらこの日は検討をしました。この検討した結果を企画発表会で報告するわけです。
1日目夕方の企画発表会でのチーム「Whiteout」のゲーム「LastPenguin」のプレゼン。
チーム「チームカーゴ」のゲーム「FruitsFactory」の企画発表会プレゼン。
この日の夕食は、みんなで食べるとなったらカレーでしょう、ということで、カレーをいただきました。ごはんづくりでは、アニメーション文化学部OBの小林亮介さんをはじめ、アニメーション文化学部の学生も力を発揮してくれました。
この日は現地に泊りでがんばる参加者も多数。未明まで開発を続けていた参加者も多かったようです。集中的に開発を行うため、参加者も運営ボランティアも健康管理が大事です。
2日目の20日は、三々五々起きだして、朝早くから開発が始まります。8時半過ぎから徐々に朝ごはんの準備もできてきて、順番に食堂で朝ご飯を取りました。ベーコン・ウインナー、具沢山のきんぴら、味噌汁の朝ごはんから開始。鮭入りのおかゆと白ごはんから主食が選べます。広島の専門学校で3D開発環境Unityの操作・活用を教えられている佐々木順昭先生も、「味噌汁は得意な料理ではないのですが、、、」とのことでしたが、味噌汁作りで大活躍をいただきました。
2日目の朝ごはん。運営支援のスタッフが用意した朝ごはんを順番に受け取っていきます。撮影:中奥貴浩さん。
2日目の開発追い込みに入ったチーム「エンジェルワークス」の様子
2日目は開発追い込みです。13時頃には、開発の中間状況を報告する開発発表会。この開発発表会は、開発を進めてもらいながら、どんなゲームがどこまでできあがっているか、実際の画面を映像に映して、代表者をはじめとするみなさんにインタビュー形式で答えてもらいます。16時が完成したゲームのリリース(インターネットでの公開)時期ですが、13時ですでに相当な仕上がりのゲームも登場していました。さらにブラッシュアップを続けて、リリース時間に備えます。
2日目13時頃から始まった開発発表会の様子。開発中のみなさんにインタビューをしながら、映像を大スクリーンに投影して、会場内のみんなで開発状況が共有できるようにしています。
開発発表会のときには、李志銘さんの「押せ!スロット」はもう遊べる状態まで完成に近づいています。すごい!
16時にはみんなでカウントダウンをして、ゲーム開発の終了を迎えます。最後は会場絵全体で拍手。ゲーム開発完了を待って、試遊機で遊べるようインストールを開始しました。ちょうど、吉備国際大学アニメーション文化学部の学生が課題解決演習の見学に来ていたので、すでにインストールができていたチーム「Criminals」(すごい名前!)のゲーム『DropOut』で遊んでもらいました。相当に面白かったようですよ。
各チームのゲームのリリース後、完成したゲームがどんなものでどこが見所(プレイしどころ?)かアピールする成果発表会が開催され、審査委員たちがゲームの審査に臨みます。成果発表会後会場を撤収して、各賞発表と懇親会の会場にみんなが移動。18時30分からの懇親会に備えます。
成果発表会。「エレベーター株式会社」のゲーム「俺のエレベーター」のゲーム画面。エレベーターのボタンを押します。
「推し推しパニック」のゲーム画面。推されるアイドルたちが表示されています。
「DropOut」のゲーム画面。立体ボール転がしゲーム。「敵を押しのける」という押す要素が入っています。
「神様の気まぐれボタン」のスタート画面。神様は女性のようです。
「押せ!スロット」のプレゼン。タイミングを計ってキーボードやスマホの画面等を押し、点滅する光を止めます。
「魔王の押し事」のプレゼン。城まで迫る勇者たちを魔王がボタン操作で撃退するゲーム。懐かしのRPG風のやや物悲しくも聞こえる音楽が気分を盛り上げます。
「FruitsFactory」のプレゼン。フルーツを押してかごに入れることで得点が入ります。
その一方で、食事を作る高梁市総合福祉センター調理室では、戦場のような勢いで参加者+スタッフ+審査員の約60人分の食事の準備が進みます。実は本ブログ報告者の(お)も、成果発表会が始まる前に総合福祉センターに食事の材料を届けたついで、食事づくりに参加することとなってしまいました(大量のほうれん草を下ごしらえし、唐揚げの下ごしらえのできた鶏肉を油に投入しては引き揚げて…といったような作業を続けました)。相当手際のよい食事準備チームだったと思いますが、なかなかたいへんでした。約50人の食事を短時間で手作りで提供するのはなかなかたいへんなものです。
(お)が懇親会会場に戻ると、各賞受賞発表の真っ最中でした。みなさん楽しそう。2日間の苦労をねぎらって、ジュースやお茶で乾杯。食事準備チームの作成した料理も好評そうでした。めでたし、めでたしというエンディングです。
表彰式兼懇親会会場の一角には完成したゲームの試遊会場が設置されていました。みんなで遊んでゲームの感想を交換します。
30時間のゲーム開発を終えての懇親会。チームやその他の参加者・運営支援ボランティアと交流を深めます。
審査委員長の佐々木洋アニメーション文化学部教授の審査員講評。
一般社団法人讃岐GameNの渡辺大代表理事から「エンジェルワークス」に讃岐GameN賞の授賞。
ゲームジャム高梁2024のハイライトダイジェストやその他のいろいろな情報は、ゲームジャム高梁のホームページで閲覧できます。
当日の各賞は、次の表のとおりです。
各賞の名前 | チーム名 | ゲームタイトル |
---|---|---|
方谷賞 | 株式会社エレベーター | 俺のエレベーター |
高梁賞 | Criminal | DropOut |
てご賞 | 魔王の押し事 | 魔王の押し事 |
讃岐GameN賞 | エンジェルワークス | 神様のきまぐれボタン |
李 志銘 | 押せ!スロット | |
JEI賞 | チームカーゴ | Fruit Factory |
これらの各賞受賞作品を含むゲームジャム高梁2024で開発されたゲームは、Unityで制作した無料ゲームを集めているUnityroomで「ゲームジャム高梁2024」で検索すると見つかります。こんな感じ。ぜひ遊んでみてくださいね!
ゲームジャム高梁2024の運営支援をしてくださった学生のみなさん:
尾中駿介さん(アニメーション文化学部1年)
柴田亜衣香さん(アニメーション文化学部1年)
古居玲乃さん(アニメーション文化学部1年)
板野那美さん(アニメーション文化学部2年)
野村花音さん(アニメーション文化学部2年)
村上千宙さん(アニメーション文化学部2年)
安藤温さん(アニメーション文化学部3年)
早瀬愛梨さん(アニメーション文化学部3年)
S.B.G. サマダラ・チャンドラマレーさん(アニメーション文化学部3年)
河原咲弥さん(eスポーツサークル・経営社会学科2年)
岡敬祐さん(eスポーツサークル・心理学部4年)
福田新拓さん(eスポーツサークル・心理学部4年)
※本記事の写真は、撮影者名の入っているもの以外は、吉備国際大学心理学部・eスポーツサークルの福田新拓さんの撮影です。