2018 年 10 月 31 日

ゲームジャム高梁2018&からくり装置作りワークショップの2日間!

10月27日、28日は、順正学園国際交流会館多目的ホールで、ゲームジャム高梁2018とからくり装置作りワークショップが開催されました!

4年目を迎えたゲームジャム高梁は、岡山市内の多数の専門学校生や、岡山や近県在住のプロ・アマのゲーム開発者・エンジニアなど30名の参加を得て、にぎやかに開催されました。本学は会場&宿泊施設の提供に加え、アニメーション文化学部教員がスタッフに加わり、学部を横断して多数のボランティア学生がこのイベントを支えます。

ゲームジャムは、2000年代アメリカで始まったイベントで、ゲーム開発者やゲーム開発を希望する人々が週末などに集まり、即席のチームで短期間で集中的にゲームを開発し、そのゲームの出来栄えを競う「お祭り」です。ゲーム開発を希望する人が現役のゲーム開発者とともに、実際のゲームの企画・開発・プレゼン・公開までを経験することで、非常に高い教育的効果があるとされています。

専門学校の皆さんは学校で勉強した内容の総仕上げとしてゲームジャムに参加しています。ゲームジャムは、若い学生がゲーム開発者といっしょにゲームを開発し、開発を実体験する実践的な教育の場として始まりましたが、高梁ゲームジャムもその役割を十分以上に果たし始めているようです。

また、OECDその他が21世紀に必要とされる能力(コンピテンス)やスキルを定義する中で、デジタル技術を介して多様な人々と協力して物事を成し遂げる力を重要視するようになっています。その場に集まった人と協力し、デジタル技術を駆使して、おもしろいゲームの完成という一つの目標に向けて努力するゲームジャムは、デジタル技術を中核とするとされる「21世紀型スキル」や「キーコンピテンシー」といわれる現代に必要とされる能力(非認知的能力)の実践的トレーニングの場としても重要な役割をもっているかもしれません。

今年は30人の開発者が5チームに分けられ、ゲームジャムのテーマ「つながる」をキーワードにそれぞれゲームに取り組みました。7月の西日本豪雨災害、高梁も大きな被害を受けた地域がありました。この災害と復興活動の中であらためて「つながり」の大切さを痛感したことから、「つながる」をテーマにしたとのことです。

1日目はチームで企画を練って、夕方に企画発表。そこから開発をはじめ、2日目午前11時にはアルファ版の提供、そこからブラッシュアップして、午後3時にはβ版、そこからテストプレイをして午後4時に完成と30時間でゲームを作り上げます。

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1日目始まったばかりの開発の様子。大きな模造紙に、アイデアを書いた付箋紙を貼り付けて、議論しながら企画をまとめていきます。

game_development1日目午後からはコーディングやお絵描きなど企画の具体化、そして開発が始まります。

1日目夕方からプログラミングとアートワークが本格化するので、1日目夜が開発の佳境です。筆者も会場に一晩中つきそいましたが、会場の明かりが消えた夜中3時過ぎまで開発は途切れることなく続きました。翌朝8時に筆者が目を覚ました時には、もう開発を始めている人々の姿がありました。30時間でゲームをつくるのはなかなかたいへんです。

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2日目α版の発表の様子。これはチームEの「走れ!コンセント君」の発表。

集中して取り組むゲーム開発中の楽しみの一つは、ごはんや軽食。実は!高梁ゲームジャムは、ごはん&軽食の充実したゲームジャムとして、西日本のゲーム開発者にはだんだんと有名になっているようです。これは、地元の方々や本学、協賛企業の後援とクリエイティブシティ高梁推進協議会の石井聡美さん(高梁市会議員でもあります)のご尽力の賜物。毎年工夫を凝らしたごはんや軽食、後援企業のKlabさんのエナジードリンクなどが提供されるので、参加者の皆さんも楽しみにしています。

今年は、中華バイキングと若者にうれしい揚げ物たっぷりのカレーライスのお昼ご飯と、石井さん手作りのサラダ付きの朝ごはん。おやつには、シフォンケーキと高梁のぶどう、高梁産の茶葉を使った高梁紅茶も提供されました。石井さんによると、充実したごはんや軽食を今後も実現するため、スポンサーも募集中!とのことでした。

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1日目のおやつのシフォンケーキと高梁のぶどう。シフォンケーキはホイップクリームを使って自分でデコレーション。

お昼ご飯の中華とカレーのバイキングは、市内の飲食店(中華料理の秘苑、カレーの吉田屋)からのケータリングを注文。モリモリ食べて地域の経済復興にも(ちょーっとだけですが)貢献したゲームジャムでした。

閉会式で、井上博明ゲームジャム高梁2018実行委員長(吉備国際大学アニメーション文化学部教授)は「どれも特色があって、順位をつげがたいおもしろい作品が集まった。みなさんに賞を差し上げたいところだ」と講評。5作品ともにユニークな作品が集まりました(詳細は、ゲームジャム高梁2018のホームページ参照)。

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井上博明ゲームジャム高梁2018実行委員長(吉備国際大学アニメーション文化学部教授)と石井聡美さん(クリエイティブシティ高梁推進協議会)

高梁賞は「ツナガル」(チームC)の「PITTANKO TAKAHASHI」、幕末の財政家・学者の山田方谷にちなんだ方谷賞はチームEの「走れ!コンセント君」、順正女学校を設立し岡山の女子教育と社会福祉の先駆けとなった福西志計子にちなんだ「福西賞」は「EATME」(チームB)の「Be Eaten!」が受賞しました。

「PITTANKO TAKAHASHI」は、高梁市にちなんださまざまなもの--B級グルメのインディアントマト焼きそばや高梁の市章、ピオーネ、松茸、郷土の偉人・山田方谷などが画面上から落ちてくるので、これをうまく積み上げて高く積んだほうが勝ちという対戦型ゲーム。操作は1つのキーだけで簡単だけど、謎の物理法則が働いてなかなか思うように積み上げられず苦労するのでハマるおもしろさがあります。また、「あー、そうか、これ高梁のアレかー」というアレや、チーム名にちなんだ「ツナ缶」やツナ缶好きのネコなど微妙に関係ないようなもの、「このかわいいキャラはどうして高梁なの?」というドット絵のキャラ、「これは、いったい何?」というものが落ちてきたりと、ドット絵のアートワークも楽しんでみてください。

PITTANKO
会場では完成したゲームをテストプレイできる。これは、「PITTANKO TAKAHASHI」のテストプレイの様子。高梁にちなんだ謎の物体がどんどん積みあがる。

「走れ!コンセント君」は、かわいいコンセント君とコンセント君の「子」を操作して、家電製品のプラグをつなぎながら謎を解いていく推理ゲーム。「あー、この世界はこういうルールなのかー」という発見も楽しく、謎やギミックを作りこんでいくことでどんどんステージができる発展性を感じさせました。

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「走れ!コンセント君」をテストプレイしているところ。扇風機に子コンセントをつないで、ぶわーっと空に舞い上がるのはちょっと快感。

「Be Eaten!」は、食う・食われる関係をたどっていくことで、食物連鎖の頂点にたどり着くことを目指すゲーム。ところが、一般的に食物連鎖というと、大きい動物が小さな動物を食うというイメージですが、このゲームは小さな動物が大きな動物に食われると、その大きな動物を乗っ取ってしまい、どんどん大きな動物に転生していくという逆転の発想のゲーム。つまり、自分が食べられないようにするのではなく、どんどん食べられていくことで食物連鎖の頂点を目指すわけです。この発想のユニークさが注目されました。

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「Be Eaten!」のテストプレイの様子。ちょっとだけ自分よりも大きな魚に食べられることで海の食物連鎖の頂点(サメ)を目指す。テストプレイには見学の子どもたちも参加。

残る2つのゲームも個性的。「スラガール」(チームA)の作品「つなげてスライム」は、もっともつながらないものというと…という発想から水と油にたどり着き、水の中を浮遊するスライム(油)がつながったり離れたりしながら、複雑な迷路のような配管を旅していくというゲーム。残念ながら時間切れで完成しませんでしたが、配管途中の歯車でスライム(油)が分裂したり、配管をゆすると(コントローラーやスマホ本体をゆする)油がくっついたり離れたりするという「仕掛け」に、「これが完成したらおもしろいかも・・・」という将来性を感じさせるものでした。

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惜しくも完成しなかった「つなげてスライム」の画面。歯車にぶつかるとスライム(油)が歯車に乗せて運ばれる。

チームCの「ラブコネ(仮)」は、つなげるといったら愛でしょうということで、はね橋を操作して、天使(キューピッド??)を下に落とさないようにして「愛」をスタートからゴールまで届けるゲーム。画面上に登場するたくさんの跳ね橋に対応するキーボード上のキーがすべて違うので、キー操作するのが相当に難しい…というのが実際にプレイをした人たちの感想でした。「あ!それはボケ防止になるかも」という声はありませんでしたが、すでに50歳を回ってしまった筆者は頭の体操的な応用に可能性があるかもしれません。ところで、天使が運ぶ「愛」ってなんなんでしょうか。

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「ラブコネ(仮)」のゲーム説明画面。こんな感じで6か所の端に対応するキーが違うので、操作が複雑。頭の体操的要素も強そう。

また、ゲームジャム高梁と並行して、多目的ホール前のロビーでは、児童・生徒を対象として、「デジタルからくり装置作りワークショップ」が開催されました。このワークショップでは、3Dアニメーション・ゲーム開発環境であるUnityを使って、参加者が協力して「ドミノ倒しゲーム」をつくることを通じて、デジタル技術を使って協力して一つの目標を達成する体験を経験します。NPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IDGA日本)が、公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団の助成を受けて日本各地で開催するものです。現役のゲーム開発者が派遣され、児童・生徒に3時間にわたって指導してくれるので、相当贅沢な機会です。

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ワークショップ1日目。小さな子も女の子も、さまざまな年代の小学生・中学生が集まりました。

子どもたちはドミノ倒しの一部をつくって、最後に全部をつなげてドミノ倒しがうまくいくようにするのが、「デジタルからくり装置作り」の目的です。Unityでは3Dの仮想的な環境をつくって、そこにドミノやいろいろなギミックを配置することで、ドミノ倒しをつくることができます。この世界には、あらかじめ物理法則も仕込んであるので、複雑な物理演算を自分でしなくても、ドミノが倒れ、ボールを落とすなどのことができます。ギミックを活用することで、ドミノが倒れるのと合わせて爆発を起こさせてみたり、シーソーを使ってドミノを倒してみたりと、いろいろな演出を実現できます。また、ぐるぐると手を回してドミノ倒しを応援するキャラクターは、子どもたちがクレヨンで台紙に絵を描いて、ノートPCのカメラで3Dの仮想的な環境に取り込むことで、子どもたちオリジナルのキャラクターをつくることができます。自分の描いた絵がコンピュータの中のキャラクターになるというような、アナログとデジタルがつながる、おもしろい体験もできるわけです。

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子どもたちはクレヨンを使ってキャラクターを描きます。ぐるぐる回る腕は、本体とは別に描きます。

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これをノートPCのカメラにかざしてパソコンに取り込みデジタル化。

2日間3時間のワークショップが開かれましたが、子どもたちは相当に集中して取り組み、一生懸命にドミノ倒しの制作に励んでいました。デジタルのモノづくりに興味があるという女の子も参加していて、そのとりわけ熱心な取り組みようはお母さんが飽きれるほどでした!

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ワークショップ2日目は、1日目にワークショップを受講してUnityの使い方を学んだアニメーション文化学部の留学生もスタッフとして指導に回りました。

ドミノ倒しづくりが終わった後も、子どもたちは会場に展示されたインディーのゲームで遊んだりと、会場で休日を満喫して帰っていきました。

10月最後の土曜日日曜日、このようにゲームを中心としたイベントが本学を会場として開かれましたが、ゲームをするだけでなく、ゲームを作ってみるということで教育的な可能性が広がることを実感できる2日間だったと思います。ゲームはプログラムだけでなく、アートやストーリーなどのさまざまな表現、人間と仮想的な世界とのインタラクションのあり方、ゲームを通じて対戦や協力する人間と人間のかかわりのデザインなどなど、学問や技術の大きな広がりがあります。短期で集中してゲーム開発をやりきるための非認知的能力の発揮とその涵養という側面も見逃せません。ゲームジャムやワークショップを通じた新しい形の教育の探求が行われていると、大げさに言えばいえるかもしれません。

さらには、クリエイティブシティ高梁推進協議会の理事でもあるIGDA日本理事の山根信二先生は、将来的にはゲーム産業を中心とするコンテンツ産業・ICT産業が高梁川流域に定着し、中四国へと広がることを構想しているようです。わ。最後は堅い話になってしまいましたが、子どもたちが好きなゲームは、教育や地域経済の一部を支える可能性も秘めているのです。

ところで。高梁市内のコスプレイベントは、なんと!すでに開催されていました。数年前備中松山城で開催され和風なコスプレイヤーさんたちに人気だったとのことです。ただし、天守が現存するもっとも高い場所にある「天空の城」松山城まで登るのがたいへん、、、ということで、交通機関どうするかなどあらためて検討中とのことだそうです。しかし、町中の名所を使わせていただけたことは、今回とても画期的!なので、「コスプレ in 高梁」は高梁の旧城下町で初めて開催されたコスプレイベントといえるはずです。

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