第71回日本公衆衛生学会が山口市で開催され,最終日の10月26日のみ出席した。この日に出席したのは,授業等の都合もあったのだが,どうしても聞きたいシンポジウムがあったためである。
山口は,昭和時代,某スーパーマーケット(当時非常勤産業医だった)の社員の健康診断に来て以来で,今はその店もなくなり,ほとんど記憶に残っていない。観光をした覚えもなく,今回もそんな余裕はなかった。
公衆衛生学会はとてつもないマンモス学会であるが,地方の決して大きくはない都市で開かれるのは異例で,主催者はかなり苦労したのではないかと思われる。実際,会場はかなり分散していて,移動に時間がかかった。もっとも,沿道は緑が多く,一部は紅葉も始まっていて,歩くのは気持ちいい。
当日朝,まず向かったのは,一般演題(ポスター発表)の第16分科会「保健所・衛生行政・地域保健」で,たまたま,本学看護学科卒業生の発表があったからである。会うのは7月の保健師同窓会以来であったが,なかなかしっかりした発表で,頼もしかった(写真)。
さて,本命?のシンポジウムであるが,「出生コホート研究」に関するもので,環境省が主導する「子どもの健康と環境に関する全国調査」などが報告された。個人的には,自治体が所有する各種データが,まとめられたり集計されたりすることなく,保管されていることに,前々から疑問や不満を持っていたので,一部とはいえ,自治体単位でデータが整備されているのは,ちょっとした感動であった。
最後のまとめとして,わが国でも,数十年単位のコホート調査が出来るような仕組みを作ろうということになったが,さあ,どうなるか。
健診や指導の記録などを統一のフォーマットでコンピュータに保存しておけば,いつでも分析に使えるわけで,言ってしまえば,たったそれだけのことなのだが,なかなか進まない。貴重なデータが死蔵されていることにイライラしているのは私だけではないだろう。
まあ,保健師の卵に疫学を教えている私にも,責任の一端はあるだろうが。
尾瀬