フィンドリーの病院で日本語通訳をしている友人に誘われ、
日本のヘルスケアシステムと看護の仕事、病院に関する文化について、
医療スタッフを対象にプレゼンテーションをする機会がありました。
私は、日本の看護師の仕事について約20分間プレゼンテーションをしました。
相手が医療スタッフで、もちろんネイティブスピーカーだったので、
とても緊張しましたが、いい経験になりました。
私はまず、日本の看護師の業務について時系列で説明をしたのですが、
私が以前働いていた病院の業務について、スライドを作りながら感じたことがあります。
それは、私達は掃除ばかりしていたなあ。ということです。
朝の環境整備、シーツ交換、退院患者のベッドの片づけ、入院患者のベッド作成、
午後からはスタッフステーションの掃除、休憩室の掃除。
さらに、フリー業務担当の看護師は、食事前には談話室のテーブルを拭く、
浴室のそうじ(抗がん剤治療をしている患者がほとんどだったので、
すぐ浴室が抜けた髪の毛でいっぱいになり、よくパイプがつまるからです)、
検査などで食事が延期されている患者の食事を保存している冷蔵庫のアルコール消毒、
汚物室の掃除など、いつも掃除や片づけばかりしていたと気づかされました。
もちろん環境整備やシーツ交換は、患者の身辺を整えるという観点から、
看護と言えると思いますが、どうにかしてもっとその時間を患者のケアの時間や
話を聞く時間に充てられないのかといつも思っていました。
看護助手やリネン交換の業者を利用している病院や施設もありますが、
私が勤務していた病院では、それらの仕事を担うスタッフ(看護助手など)がいませんでした。
コスト面の調整がうまくいかないからだと聞いたことがあります。
アメリカは、自分の仕事の範囲が明確に決められています。
看護師も、採血だけが専門のスタッフ、退院指導専門のスタッフという風に、
仕事がきっちり分かれています。
その方が自分のやるべき仕事と責任が明確になり、仕事の効率も上がるかもしれないし、
ひとつの分野を極めることができるというメリットがあると思います。
しかしその場合に問題となるのは、スタッフ間の連携(コミュニケーション)です。
つまり、たくさんの人が患者と関わる場合には、
どう患者の情報を共有するかがポイントということです。
私が勤務していた病院では、共有記録といって、患者に関わった人全員が
同じカルテに記載する方法(クリニカルパスも同じです)を採用していましたが、
それも一つの情報を共有する方法だと思います。
さらに、職種間やスタッフ間の連携をスムーズにするためには、
自分の仕事の範囲と責任を知っておくだけではなく、
一緒に働く相手の仕事の範囲と責任も同じように知っておく必要があります。
でも一方で、看護師の業務を細分化して、
「それは私の仕事じゃないから知らない、分からない、しない。」と言う看護師が
もし出てきたら、それはちょっとさみしいなと思います。
だって昔はもっといろいろな仕事を看護師はしてきたし、
(昔、看護師が検体検査もやっていたと吉備の先生から聞いたことがあります。
また、私は患者さんの部屋のテレビの修理までしていました。
携帯電話の使い方もレクチャーしたことがあります)様々なことを広く知って、
患者の生活全般を支援するのが看護師の仕事だと私は考えている部分があるからです。
今、ナースプラクティショナーの業務内容などについての議論がされていますが、
看護の専門職性とは何かということを考えることは、
とても複雑で難しいなと思う今日この頃です。
あ、あと日本の看護師の身だしなみのルールの厳しさ、
接遇について話していたら、その厳しさにアメリカ人たちは驚いていました。
このプレゼンテーションをするにあたって、病院の中を少し見学させてもらっていたら、
衝撃的なものを見つけました。(写真を添付します)
この病院では、食事は時間が来たら配膳されるのではなくて、
ホテルのルームサービスのように、メニューが各部屋にあって、
自分で食堂に電話してオーダーします。
すると食堂のスタッフが料理を部屋まで運んでくれるというシステムで
(アメリカの多くの病院がこの方法だと聞きました)、
その料理のオーダーの電話番号を見てビックリ!!
日本ならあり得ない番号ですよね。444なんて。
あと、料理の値段が書いていないのも、後からの請求が怖いな~と思いました。
その他にも、アメリカの医療制度や病院の構造など、
日本とは違うものが多くとても興味深く見学をさせてもらいました。
機会があれば、クリーブランドクリニックのようなマグネットホスピタルの中も
見たいと思いますが(外観だけ見ました)、余りに広いので、
間違いなく筋肉痛になると思います。(笑)