2022 年 11 月 7 日

ゲームジャム高梁2022、3年ぶりにリアル会場でも開催でした!

10月22日(土)、23日(日)に、「ゲームジャム高梁2022」が開催されました。今年は7回目と、もう日本国内では老舗のゲームジャムの一つとなったと言えそうです。

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ゲームジャム高梁2022のチラシ。イラストはHANAさん。HANAさんは、昨年のゲームジャム高梁のイラストも描いて、大活躍です。どちらのイラストもかわいいし、元気がよくて素敵でしょ?ゲームジャムのロゴマークは、Dakshitha Prasanaさんのデザイン。こちらも本格的です!

アニメーション文化学部は、その第1回から教員・学生が協力してゲームジャム高梁を実現してきました。また、意欲ある学生たちがクリエイターとして参加もしてきています。

この記事では、ゲームジャム高梁2022の様子を伝えるだけでなく、ゲームジャムとゲームジャム高梁の歴史を少しふり返っておきましょう。

ゲームジャムは、クリエイターやクリエイター志望者が集まって、即席のチームで、数十時間~数日という短期間でゲームを制作するイベントです。多くの場合、ゲームジャム開催に際してテーマが発表され、そのテーマに沿った企画を頭をひねって絞り出し、ゲームに仕上げていくという形を取ります。

ゲームジャムは、2002年にアメリカで始まり、現在は世界中に広まって、毎年1月末から2月上旬には、世界中で同時にゲームジャムを行う「グローバルゲームジャム(GGJ)」が開催されます。

2002年に始まったとき、ゲームジャムは、「インディー」と呼ばれる大資本のゲーム企業には属さない、個人や小企業のクリエイターが、新しい発想のゲームを生み出すためのイベントでした。

その後、デンマークで、技術のレベルを問わず、初心者も含め300人を集める「ノルディックゲームジャム」をきっかけに、新しいゲームの可能性を広げる実験に加えて、クリエイター志望の若者や入門レベルのクリエイターなど、クリエイターを育成するイベントとして発展してきました。

つまり、ゲームジャムに参加し、経験することで、学生やクリエイター志望者が、現役のクリエイターやエンジニアとともに開発・制作活動をする中で、実際のゲームの企画・開発・制作・広報等の一連のプロセスを実地に・実践的に学ぶことができると期待されています。実際、大学の多くの情報系の学科や、ゲームや情報系の専門学校の学生が、先生の勧めで、学修の総仕上げとしてゲームジャムに参加するという例が多数あります(私たちのゲームジャム高梁でも毎年大学生・専門学校生が参加してくれます)。

岡山県高梁市でも、2015年にゲームジャム高梁が始まりました。日本にゲームジャムの運動を持ち込んだ一人である岡山理科大学の山根信二(現、東京国際工科専門職大学)先生と、高梁議会議員の石井聡美さんが、ゲームジャムにクリエイター育成と地域振興の可能性を見出し、高梁市と吉備国際大学など地域を動かして始まったのが、ゲームジャム高梁です。

吉備国際大学アニメーション文学部は、教員・学生が継続してゲームジャム高梁の準備・運営に協力してきました。また、クリエイター・開発者を目指す学生が、ゲームの制作・開発チームの一員としても参加してきました。

とくに、井上博明教授は、第1回目からゲームジャム高梁実行委員会委員長を務め、ゲームジャム高梁の運営を進めてきました。さらに、2019年に一般社団法人クリエイティブシティ高梁推進協議会が設立されて、委員会から運営主体が移管されてからは、井上先生は審査委員長として活躍しています(今年も審査委員長を務めていただきました)。

2019年からは、eスポーツサークルの顧問(村上勝典講師)と学生がゲームジャム高梁の運営にかかわるようになり、とくに、2021年、今年と、ゲームジャム高梁のオンライン配信では、同サークルの学生たちが大活躍をしています。また、昨年はVTuberのSugarさん夕凪ユナさんが参加し、ユナさんは今年も配信の司会・コメンテーターとして協力してくれています。

今年は、高梁市にある岡山県立高梁城南高校のデザイン科の先生も、ゲームジャム高梁をボランティアスタッフとして支援してくださいました。地域の人々のゲームジャム高梁に対する関心も広がっているようです。

コロナ禍の2020年は中止となりましたが、2021年の完全オンライン開催を含め、今年のゲームジャム高梁2022で、ゲームジャム高梁は7回目を数えることになりました。

ゲームジャム高梁2022は、リアル会場の吉備国際大学国際交流会館多目的ホールに加え、オンライン会場も設けるハイブリッド形式で実施されました。リアル会場は20人、オンライン会場には14人がクリエイターとして参加し、各地で行われるゲームジャムとしては相当に大きな規模のものとなっています。

今回は、とくに中学生や専門学校生が多数参加し、ゲームジャムがクリエイターを育てるイベントだということがあらためて認識されました。中学生は、1日目の企画発表会で大活躍し、その後も最後までゲームジャムにつきあってくれました。今年は、穴吹カレッジグループの中四国の専門学校の学生たちが多数参加し、ベテランのクリエイターやエンジニアとともに、それぞれの知識や技能を発揮しました。

7回を重ねることで、ゲームジャム高梁には、岡山Unity勉強会(面田高章会長)をはじめ、広島Unity勉強会(中奥貴浩会長)、讃岐GameN(渡辺大代表)など、多くのクリエイター・エンジニア集団が参加・協力し、中四国のインディークリエイターの重要な交流拠点となってきました。また、岡山eSports連合(本村哲治会長)の協力も得ています。

ゲームジャム高梁2022は、10月8日に開かれた事前勉強会から、「ペラコン」を開始、ゲームジャム当日に投票で制作するゲームとチームを決めるという方式を取りました。

「ペラコン」とは、A4「1枚ペラ」の企画書をつくり、その企画書の「『コン』テスト」を行うことを指します。自分の制作したいゲームの面白さを伝えるため、A4の紙1枚に自分の制作したいゲームのアイデアをまとめるので、企画をよく練って、ゲームの面白さをわかりやすくまとめるというトレーニングになります。

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「ペラコン」の例。Denimさん提案の「ZOMINO!!」のペラコン。

ぼんやりとした「おもしろそうだな」と思えるゲームのアイデアを考えるのは多くの人ができますが、これを実際にみんなで制作しようと考えてもらい、実際におもしろいゲームに仕上げるためには、説得力がありわかりやすい企画書をつくる必要があります。この企画書を制作するというトレーニングが、「ペラコン」ではできるわけですね。また、ベテランのクリエイターやエンジニアも参加するので、彼らの企画書がクリエイター志望の学生たちのお手本になるわけです。

ゲームジャム当日は、ゲームジャム高梁2022のスケジュール発表と、審査委員長挨拶、その後ペラコンによるチーム分けと進んで、今年の開会宣言です。吉備国際大学国際交流会館のリアル会場のチームは3つ、オンラインチーム2つに分かれて、ゲーム制作が10時30分過ぎには始まりました。

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吉備国際大学国際交流会館リアル会場の全景。

先ほども書いたように専門学校の学生が多数、中学生も加わっての開発・制作ですが、まずは役割分担。中学生たちは、1日目最後に行われる企画発表が役割になりました。専門学校生はそれぞれの得意に応じて、プランナー、プログラマ(コーダー)やデザイナー、アニメーターなどの役割を担います。ベテランのクリエイターやエンジニアが引っ張る形で制作・開発を進めるチーム、若い人たちに先行させて、ベテランがフォローに回りつつ全体を動かしていくチームなど、チームのマネジメントの仕方もそれぞれです。

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チーム「釣り猫レポート」の役割分担、企画を練ったホワイトボード。思考と討論の軌跡がまざまざと残ります。

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こちらは作業用チェックリスト。こうやってチームの皆が見えるところにチェックリストを掲げることで作業進捗が目に見えるようになります。

ゲームジャムをよくよく観察すると、チームのマネジメントも含めていろいろと学べることが大きいです。また、参加したクリエイターやエンジニアたちの力量がとても大きいことにも気づかされますね。

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1日目のお昼ごはん。炊き込みご飯とけんちん汁です。運営を仕切っている某Oが見積もりを間違えて、ものすごーくたくさんできてしまいました(–;

4年生の王勇くん(中国出身)、3年生のオミヒさんの吉備国際大学の留学生2名も、今年のゲームジャム高梁には参加しました。二人ともゲームジャムを楽しんでくれたようでようで、教員としてはとてもうれしいです。

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王勇くん

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オミヒさん

1日目夕方17過ぎに始まった企画発表会では、オンライン2チーム、リアル会場3チームの計5チームのゲームが出そろいました。ゲームジャム高梁2022のテーマは「集まる」。いろんなものが集まりましたよ。

最初に、オンライン2チームのゲームを紹介します。チーム「骨付き鶏」のゲームは、「救出!ぴよぴよ大作戦」。障害物をよけながら、制限時間以内に、迷子になったカルガモのひな鳥を「集めて」、巣に連れ戻すというゲームです。カルガモのイラストも会場で話題ですよ。

「うさぎランチ」チームは、「鷺(さぎ)の昼食」を制作しています。もともとの企画段階では、鷺(さぎ)が食べ物を食べ歩く対戦ゲームでしたが、企画を検討する中で、スコアアタックを競う一人ゲームへと発展したそうです。企画が議論して検討する中で育っていく「生き物」だということがわかりますね。「集まる」とのかかわりは、ちょっとだけ謎です。

次に、吉備国際大学国際交流会館のリアル会場で奮闘中の3チームのゲーム。

猫と旅する小説にちなんでチーム名をつけた「釣り猫レポート」は、「吾輩は釣り猫である」という釣りゲーを制作しています。猫が船から釣り針を下ろして、流れてくる魚を釣り針に「集めて」たくさん釣り上げるゲームです。でも、釣り針に魚が集まれば集まるほど、釣り針の動きが鈍くなったり、障害物に邪魔されたりと、高得点を取るのも簡単ではないようです。

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企画発表会の様子。チーム「釣り猫レポート」の「吾輩は釣り猫である」のプレゼン。

チーム「ホワイトドラゴン(仮)」(ほわいとどらごんかっこかり)の「ミラクルデュエル」は、奇跡の力・運を「集めて」魔王を倒すゲームです。お互い順番に殴り合うコマンドバトルですが、攻撃が当たる「運」をアイテムで集めていくと、魔王を倒すまで強くなるかもしれない⁈そうです。企画発表会では、中学生が活躍しました。

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企画発表会で活躍の中学生たち。

チーム名「サバイバー」は、「ZOMINO!!」を制作。ゾンビ+ドミノで、「ゾミノ」ですね。わらわらと「集まってくる」ペラッペラなゾンビを倒すサバイバルゲーム。ドミノ倒しでまとめて倒すのがだいご味で、できるだけゾンビを引き付けるのが、ドミノ倒しのコツ。スリルと爽快感が期待できますね。

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企画発表会の様子。チーム「サバイバー」の「ZOMINO!!」のプレゼン。

企画発表会後は、いよいよプログラミングです。夕方からプログラミングやキャラクターのデザインなどを開始したので、夕ご飯ができあがっても、みなさんなかなか立ち上がりません。コーディング・デザインなどなどに夢中です。

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1日目夕ご飯のカレーライス。こちらもたくさん。ゲームジャム高梁は、手作りのごはんのおいしいゲームジャムとしても有名です。

夕食が終わってからも、さらに奮闘が続きます。オンライン会場では、ディスコードというオンライン協働環境・会議システムを活用して、ボイスチャットによる音声でのやりとりもふくめて、企画の意識合わせをして、お互いの進捗を確認し、できあがった要素を共有しながら、協働作業が続きます。21世紀ではごく当たり前になる遠隔地の仲間とのオンラインでの協働作業環境も、オンラインのゲームジャムならば実践的に体験できるわけです。

リアル会場では夜遅くまで多くの人が会場に残って開発をがんばっていました。夜中1時に会場担当某Oが寝袋に潜り込んで眠ったときも、もくもくと制作・開発を続ける参加者も多数いましたよ。

翌朝も早くから制作・開発が続きます。8時に会場の国際交流会館を開けるときには、制作・開発活動が少しずつ動き出しました。

クリエイティブシティ高梁推進協議会の石井代表やアニメーション文化学部の学生たち(アニメーション文化学部の卒業生も)は、1日目からごはんづくりに取り組んできたのですが、2日目もごはんづくりに精を出します。食べ盛りの若者たちも満足してもらおうということで、4食合計300円という破格の値段で食事を提供しています。

1日目、2日目と、たくさんの見学者・来訪者がありました。吉備国際大学の1年生向けの授業「課題解決演習」では、ゲームジャム高梁や、やはりクリエイティブシティ高梁推進協議会が取り組むICTクラブ高梁などの地域活動をもとに、コンテンツ制作を通じての地域振興を考えます。この1年生がやってきたほか、地域のテレビ局や新聞の取材もありました。また、地域の子どもたちやICT(情報通信技術)に関心がある方々、岡山県立高梁城南高校の校長先生も会場を見学してくださいました。

開発・制作は順調に進んで、12時には体験版がディスコードでリリース。しかし、こちらも某Oのせいで(^^;、参加者だけしか遊べないという困った事態に。とほほん。

16時に最終版がリリース予定だったのですが、いろいろあって、結局この日はリリースは延期となって、17時からの成果発表会を迎えました。各賞発表はまた後日…というオチ。

その後はみんなで原状復帰のお片づけ。参加者の皆さんもたいへん疲れているでしょうに、とても協力的で、ごっちゃり残されていたたくさんの機材(子どもたちがゲームで遊んだり、配信で活用されたりしたさまざまな機材)もきれいに片づけることができました。ゴミもきれいに分別がされていて、最後始末する某Oも「ありがたやー」のひとことです。また、eスポーツ同好会顧問の村上勝典先生は、2日目午後から静かに目立たず手際よくいろいろなものを片づけてくださっていて、たいへん助かりました。

ICTクラブ高梁に移ってから、学生たちがつくった料理で、大人の参加者たちは後夜祭を楽しみました。

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ゲームジャム高梁2022で開発されたゲームは、Unityroomに順次アップロードされます。Unityroomにアクセスしたら、「#ゲームジャム高梁2022」で検索してみてくださいね

ゲームジャム高梁終了後、参加した子どもたちの保護者の皆さんから楽しかったという子どもたちの声が届いたのがとてもうれしかったですね。子どもたちの将来の希望は変わるかもしれませんが、このゲームジャムが彼らや学生たちの未来を後押ししてくれる何かを残してくれるといいなと思います。ゲームやアニメーション、アプリ開発などの起業や企業誘致による地域振興へとつながることも期待。しかし、某Oが学生たちに、デジタルゲームや映像・アニメなどのクリエイティブ産業の都市として育った福岡市を例に説明したように、地域振興がどんな形で結実するかは偶然にも左右されるので、まだわかりませんね。

こうして、今年のゲームジャム高梁も、たくさんのみなさんのご理解・ご協力・ご支援のおかげで無事に終わることができました。参加者のみなさん、スタッフの学生や地域の人々が楽しんでくれたのが、何よりも一番の収穫です。

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