2014 年 7 月 1 日

実験風景@研究室

地域創成農学部では農業に関する様々な分野を専門とする先生方がいらっしゃいます

が、私(吉川)の専門は植物育種学です。「育種」というと「?」と思われる方も

多いかもしれませんが、簡単に言うと「品種を育成する学問」のことです。

「品種」というのは、お米でいうと「コシヒカリ」や「あきたこまち」のことで、

きちんと言葉で説明すると「遺伝的に異なる生物集団の単位」と表現されます。

 

生物の遺伝的形質はほぼ全て遺伝子によって支配されているので、「コシヒカリ」や

「あきたこまち」は違う遺伝子をもったイネということになるのですが、約3万個ある

と言われている遺伝子のうち、どういう遺伝子がどういう働きをしているのかちゃんと

分かっているものはごく一部に過ぎません。したがって、効率的に品種改良をしていく

上で、遺伝子の機能を明らかにすることは極めて重要であり、その中でも私は特に

植物の生長においてどういう遺伝子がどういう働きをしているのか、というところに

興味をもって研究をしています。

 

前置きが長くなってしまいましたが、このような研究をやっていくのは一人だと

タイヘンなので、遺伝子操作に興味のある学生さんにお手伝いをしてもらいながら

実験を進めています。

(新しく発見した遺伝子のシークエンスを解析しているところ)

 

また、植物の生長を詳しく調査するためには、外見だけではなく、その内部構造を

調べることも同じぐらい重要です。内部構造を調べるためには、組織をパラフィン

包埋し、8μmの厚みでスライスした切片を作成・観察する必要があります。

ちなみに、1μmは1/1000mmのことで、髪の毛(0.1mm)の1/100の細さです。

(お米の胚(上)の縦断切片(下))

(大麦の潁花(左)の横断切片(右))

 

このような薄い切片を作るためにはミクロトームという特殊な機械が必要に

なります。学生さんも最初は手こずっていましたが、回数を重ねるごとに

どんどん上達し、今ではどんなサンプルでも切れるようになりました。

(ミクロトームで切片を作製しているところ)

(実験の指導をしているところ)

(作成した標本を観察しているところ)

 

実験をやり始めた頃は学生さんの手つきもおぼつかなかったのですが、

回数を重ね、成功したり失敗したりを繰り返していくうちに知識も技術も

どんどん上達していきました。彼らの成長を実感するたびに、興味が

あるというのは本当にスゴいことだなぁと思います。でも考えてみれば、

大学に行くということは、自分の将来を見つけるということ、つまり

自分は何にやりがいを感じるのか、何に興味があるのかを4年間かけて

見つけることなのではないでしょうか?

 

地域創成農学部には作物の生産、加工、流通に関するいろんな先生方が

いらっしゃいます。食べるということは生きるということです。食べ物に

興味がある人、食べ物の入口から出口までを包括的に勉強してみたいと

いう人がいれば、是非オープンキャンパスに足を運んでみて下さいね。

 

吉川貴徳

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