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スペシャルインタビューvol04 叡媛(キム・イェオン)助教に聞く アニメーション文化学部で美術・デッサンを学ぶということ

スペシャルインタビューvol04 叡媛(キム・イェオン)助教に聞く アニメーション文化学部でアニメーション制作を学ぶということ

金叡媛(キム・イェオン)アニメーション文化学部・助教略歴

専攻:アニメーション制作。韓国アニメーション高校アニメーション学科を経て、2011年3月東京工芸大学芸術学部アニメーション学科卒業、2014年東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修士課程修了。修士(映像)。大学院修了作品「日々の罪悪」は2014年度Indie Ani-Fest(韓国)音楽部門特別賞受賞。ミ ュージックビデオbronbaba「雨の日」は、2014年度Pucheon International Animation Festival Art Gallery招待作家展で上映。本学着任まで、日本の映像制作チームONIONSKINのメンバーとしても活躍した。

アニメーション作家を志すきっかけ

――先生がアニメーション作家を志すきっかけはどのようなものでしょうか。高校からアニメーション専門の学校で学ばれています。この学校に行こうと思った理由や経緯も教えてください。
はい、子どもの頃から、漫画やアニメーションが好きで、絵を描き続けていました。中学生時代までは、イラストレーションや漫画を描くサークルに入って趣味活動として行っていたんですけれども、アニメーション、漫画、映像、ゲームを教える公立の高校ができたという話を聞いて、物作りを将来の職業として考え始めるようになったのかもしれません。
小学生の頃から、テレビの音楽専門チャンネルで流れるミュージックビデオ映像を観ることもとても好きだったので、アニメーション映像の勉強をしたら、絵を描くこと以外に音楽の要素にも触れて楽しそうだと思いました。そういった理由でアニメーションの高校に進むようになったのかもしれません。
そして、アニメーションといった文化コンテンツの役割や影響力がこれから大きくなり、韓国国内でも重要な産業になるのではと、当時できたばかりの綺麗な校舎や、教育の話を聞いて、アニメーション専門の学校に進もうと思ったのかもしれません。
――子どものころはどんなアニメをご覧になっていたんですか?
有名なSLAM DUNKとかセーラームーンとか、ジャパニメーションを放送していて見ていましたね。
――ミュージックビデオをご覧になるのが好きだったとのことでしたが、好きなアーティストはありました?
(笑)とくに好きなアーティストがいたというわけではないんですけど、ずっとミュージックビデオが流れる音楽専門チャネルがあったんです。これをよく見ていました。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、「Channel V」という番組です。
「アジア・アニメーション・シアター」のためのイラスト案 「来てくれてありがとう」
「アジア・アニメーション・シアター」のためのイラスト案
2015年
「来てくれてありがとう」
2016年
五六七を待つ Sの頭像
1ページ漫画「ワルツ」
2016年
NAVER ウィンド・マケット・デーのためのイラスト 「赤いブルゾン」
2016年

影響を受けた作品

――作家として、先生はどのようなアニメーションや芸術表現に影響を受けてらっしゃいますか?
アニメーション作品の中では、ユーリ・ノルシュテイン監督の「あおさぎと鶴」(1974年)に影響を受けました。この作品は、ロシアの民話を原作としている、オスの鶴とメスのあおさぎの恋の物語で、カット・アウト・アニメーションという技法を使い、切り絵を動かす方法で制作させてとても美しい作品です。
この作品に登場する主人公の二人は、お互いに好意を持っているのにもかかわらず、不器用で冷たく接してしまったり、すれ違ったりしますが、そんな姿を表現するキャラクターの演技が絶妙ですし、シンプルな線で描いた、相手に断れた時の失望した表情などキャラクター表現が素晴らしいと感じました。また、この作品を鑑賞して、キャラクターたちの関係性が作るストーリーの面白さを意識するようになったのではないかと思います。
――この作品は、先生の作品や表現にも大きな影響を与えてますか?
そうですね、キャラクター表現という点でとくに影響を受けていると思いますね。
――影響を受けた本はありますか?
影響を受けた本は、いろいろあるのですが、一冊選ぶとしたら、マックス・エルンストのコラージュロマン「百頭女」を挙げておきたいと思います。この本は、19世紀の挿絵本やカタログの木板画を切り抜いて貼りあわせることで制作されたそうですが、各ページに、1枚の画像と1つの短い文章が載っている形式で、文章は、画像の内容を明確に説明するために用意されたものではありません。とても不思議で、読み方にも解釈にも、可能性が開かれているように感じさせる本だと思いました。(註:「百頭女」(La femme 100 têtes)は、日本では、河出書房から文庫で翻訳が出版されている)
最近まで私が所属していた映像制作チームONIONSKINのメンバーとともに制作した「ギルティが行く」という漫画でも、この本のように1つのコマに自身の日記やメモから抜粋した一つの文章を添える形で作品を作ったことがありますし、最近制作している一連のイラストレーションでも、過去のEメールなどから見つけた短い文章を絵に添えていますが、私から、複数の要素から生まれる意味を問うような、絵を見る側の方にちょっとした遊びを投げかけているような感覚もしているので、制作することが楽しいですね。

アニメーション表現の利点と、これまでに受けた印象的な授業

――アニメーションは、ほかの映像表現や芸術と比較してどんな魅力や表現上の利点がありますか?
画面の中のすべての要素を、制作者が統制し、コントロールすることができるので、例えば実写映画の様な撮影現場で、予期できない自然現象の影響など、突然の出来事によって、 計画通りの絵が描けなかったということはないと言えるのではないかと思います。その点が大きな表現上の利点だと思います。
――そういう意味では自由さがある?
あー、そうですねえ。
――高校や大学、大学院では、どのような授業が印象に残っていますか?
高校の時に印象に残っている授業は、シナリオの授業です。授業がある期間の間、外部からシナリオ作家の先生が毎週学校にお越しになって、よく作られた、魅力のあるストーリーが持つべき要素や条件について、韓国国内や海外の短編・長編作品を具体例として紹介しながら説明してくださったので、理解しやすかったです。短いストーリーの概要を作成する課題を進めて行くと、自分自身の考えや知識、情報の範囲を超えるものや事に関して書くことは不可能であることを感じました。書いたもの、表現したものが自分の現状を赤裸々に表していると感じた体験を含めて、勉強になったと思います。
大学では、アニメーションの動きについて密度のある授業が行われていて、様々な作画の課題を解決するため、放課後などにも時間をかけて自主学習を行いました。当時、アニメーション学科は、芸術学部の他の学科に比べても課題が多い方と、サークルの人などからも聞いていましたが、休まずに手を動かして描く絵の量を増やしていったので、それまで作画の作業に抱いていた漠然とした気持ちや迷いは徐々に無くなっていきました。
大学院では、平面アニメーションの授業や、アニメーション史の授業などが印象に残りますが、作品制作の中間報告などを含めて、様々な授業で複数回のプレゼンテーションを行ったことが記憶に残っています。自身の作品について話す時に用いるべき言葉や資料を、先生方をはじめ全体の人に伝わるように準備することが勉強になったと思います。

「日々の罪悪」(東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了作品)、2014年


アニメーション作家を目指す人へのアドバイス

――アニメーション作家や、アニメーションにかかわる仕事に就きたいと思っている学生の方々に何かアドバイスありますか?
アドバイスできることは……表現の仕事ですので、日常の中から些細な発見ができたり、心が何かに感動できるようにし、作品作りに発展させていただきたいということです。そういった理由からも、クリエイティブな仕事に就きたいと思っている方々がいたら、心が豊かになるような体験に目を向け、自身の内面が疲弊するような環境に自分を置かないことが大事だと思います。
また、仕事を始めてから、クライアントワークの納期や作品の締め切りなど、時間に悩まされる場合があるかと思いますが、時間の使い方を具体的に考えることで、限られた時間や自分自身の生活をきちんと管理できるという意識を持つことができるのではないかと思っています。
――現在の技術や制作現場の状況を考慮すると、アニメーション制作に取り組むためには、どのようなスキルや能力、知識を身に着ける必要があるでしょうか?
作品の制作や仕事に用いる技術などは、作品の技法や規模によって変化するものだと私は思っています。また、デジタルの技術も、その進化のスピードがとても速いものですから、現在の制作で必要なものを挙げることも、少し大変そうに思います。
道具に慣れることも大事ですが、どんな道具や材料でもアニメーションを作りだせる人が、変化する環境の中からでも、その都度の作品のコンセプトや予算、制作期間に合わせて最適な表現ができますし、自分自身に合う制作方法を探すことができるのではと考えています。
アニメーションは動きのある表現を自由にデザインする芸術だと思っていますので、たくさんの作品を注意深く鑑賞して、印象に残る動きや演技などを自分の引き出しに入れておくことは大事だと思います。そういった作業を、躊躇せず習慣的にできる人こそ、アニメーション制作でより根本的な問題解決に役立つ感覚を育てることができると思っています。
――そうすると、作品を注意深く、細部をよく見て行くことが大事ということでしょうか。
うーん、そうですね。何よりも大事なのは……アニメーションが好きで、量をたくさん見て行くということが役立つように思います。
――なるほど。そうすると、基礎となるアニメーションの力って何なのでしょうか?
そうですね、アニメーションは動きのデザインが重要ですから、一番重要な要素は動きではないでしょうか。先ほど申し上げたように、作品をたくさん見る、リファレンスを探すのにストレスを感じない人がアニメーション制作には重要と思います。
――原画を書いて、中割をつくってというアニメーション制作の基本的原理がありますが、まずはその理解が重要ということになりますかね。
基礎となるアニメーションの原理を理解したうえで、どんな道具を与えられても、アニメーション表現ができるようになると、楽しい創作活動ができるようになると思います。

今後の展望や目標

――先生の授業ではどのような教育を行おうとお考えでしょうか。
アニメーターとしての力を育てることにフォーカスを当ててお話しますと、まずは、アニメーションの原理を理解するための様々な課題制作を通じて、絵を描くことに対する漠然とした気持ちや迷いを減らし、アニメーションに興味を持って頂くことで、自然に学習効果を高めることができればと考えています。また、ご質問の意図からは外れているかもしれませんが、学生の皆さんの作品の進め具合や要望などを伺いながら、授業を進めて行きたいと思っています。
――吉備国際大学での教育や研究に関して、アニメーション作家としてどのような展望や目標をおもちか教えてください。
吉備国際大学アニメーション文化学科の学生の皆さんが、「学校に行って授業を受けると、必要なことが学べて、良い作品に触れられる。」と、当然そう思えて、有意義に大学生活を送ることができるように、1人の教員として最善の努力を尽くしたいと思います。
一人の作家としては、日本が西洋文化を受け入れ始めた明治・大正時代の装いやモチーフに興味を持ってイラストレーション制作をしており、偶然にも吉備国際大学のある岡山県が竹久夢二の生誕の地だと知って嬉しく思いました。現在のようなイラストレーション制作と、学生時代に続けていた実体験に基づくアニメーションの方向性で、作品制作を考えて行きたいと思っております。学生の皆さんにも、制作活動のご参考になりますよう、頑張っていきたいと思います。
――高校生・大学生に対して、大学生活(授業だけでなく、その他の領域に関しても)に関するアドバイスがあれば、お願いします。
まず、安定した睡眠、適切な食生活、できれば適度の運動をして、健康管理をすることが大事だと思います。アニメーション制作や勉強をする時も、集中力を発揮して、その都度必要とされる良い判断を続けるためにも健康であることは一番大切です。
また、吉備国際大学には留学生の方も多く在籍していると聞きますので、自分の経験からアドバイスすると、日本で大学を通いながらも、自身の第1言語(母国語)でできている本を読む習慣を身につけた方が良いと思います。読みたい分野の本が、今まで住んでいた国に無い場合は、日本語の原書を読むことがもちろん必要ですが、外国語(日本語)でできている本を読もうとして選んでいると、最初は読みやすい本を中心に選ぶ可能性があるからです。配送料が比較的安い船便を使って、家族にお願い事をしてでも、自身の年齢と本来の読書水準にふさわしい本を読むことが大事だと思います。
読書を通じて、自身が作る作品や研究内容について考えを深めることや、その内容をきちんと言語化し説明できる能力を身につけられると思います。
――着任の手続きの間を縫って、お忙しい中、お答えいただき、どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
インタビュー:2017年2月
撮影:今村俊介、構成・インタビュー:大谷卓史
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