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佐々木洋准教授に聞く アニメーション文化学部で背景美術・イラストレーション学ぶということ

スペシャルインタビューvol05 佐々木洋准教授に聞く アニメーション文化学部で背景美術・イラストレーションを学ぶということ

佐々木洋アニメーション文化学部・准教授略歴

専門:背景美術、イラストレーション。手塚プロダクションからサンリオフィルム、アトリエ戯画、A.P.P.P.を経て、ガイナックスへ入社。手塚プロダクションで、『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』(1980年)の背景美術に参加。その後、ガイナックスでは、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987年)で背景美術・設定ボードを手がけ、『トップをねらえ』(1988年)・『ふしぎの海のナディア』(1990-1991年)などで美術監督を務める。近年では、『巌窟王』(ゴンゾ、2004-2005年)、『ストライクウィッチーズ』(ゴンゾ、2008年)などのアニメーション作品で美術監督(『ストライクウィッチーズ』では設定も)を務めたほか、TM NetworkなどCD/LPジャケットのイラストレーション・デザインなども手がける。2019年度から吉備国際大学アニメーション文化学部准教授。

「背景美術」「イラストレーション」の授業について

――アニメーション文化学部で先生がご担当されている授業を紹介いただけますか。
もともと「背景美術」を手掛けてきたので、「背景美術」と「イラストレーション」にかかわる授業を担当しています。授業は、基本的に実際に絵を描いてもらって、学生それぞれの個性に合わせて指導をしています。「背景美術」では、実際に現場で使われている技術の説明が主になります。「イラストレーション」のほうでも、やはり背景は必要ですので、この授業でも背景に関しては教えていることになりますね。受講生は、絵を描くのが得意な学生がだいたい2/3くらいですが、基本的には知識を身に着けてもらう、絵の見方、絵画教養を身に着けてもらうことを重視しています。ですので、絵が苦手だという学生でも楽しんでもらえる授業になっていると思います。
――プロデューサー志望、文化研究を学びたいという学生も、そうすると、先生の授業を受けるとマンガの読み方や絵の見方も変わってきますね。
実際の裏話のようなものも結構やっていますし、画面をつくる考え方や、裏側でスタッフがどのように動いているのか、おもしろさの仕掛けなども説明していますので、単純にアニメが好きだというだけでも楽しんでもらえると思います。
――絵を描くのが苦手だということだけで先生の授業をとらないとなると、もったいないですね。学生の様子はどうですか。
すごい、やる気のある学生がいっぱいいまして、こちらが翻弄(笑)されているような状態です。
――いわゆる「うれしい悲鳴」状態ですね(笑)ところで、先生はどのようなきっかけで背景美術の世界に入られたのですか。
もともとイラストレーションが好きで、新聞広告を見つけて、手塚プロダクションに入りました。劇場映画『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』(1980年)のお手伝いから始まりました。その後、サンリオフィルム――現在は社内体制が変わっているようですが――に入って、3年ほど劇場映画を手掛けました。
佐々木洋准教授

先生の代表的な作品・好きな作家について

――先生が背景美術として参加された代表的な作品を紹介いただけますか。
ガイナックス時代の『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987年)、『トップをねらえ』(1988年)、『ふしぎの海のナディア』(1990-1991年)が美術としての力を強く発揮できた作品ですね。これらの作品も含めて、今まで手掛けた設定ボードや、背景画などは、Twitter(https://twitter.com/Marudashi7)でときどき公開しています。
――先生ご自身が絵を描く仕事につこうと、中学生・高校生のころから自覚的にされていたことはございますか。
一つのジャンル、対象にだけこだわらず、いろいろなジャンルや対象に目を向けて描いていくことに気をつけていました。興味の幅を広く持っていないと長続きしませんので。
――若いころに先生がお好きだったマンガ・イラストレーションの作家には、どのような方がいますか。
マンガはいろいろ好きなものがありますね。手塚治虫先生はもちろんですが、石ノ森章太郎先生、諸星大二郎先生が大好きでした。イラストレーションでは、フランク・フラゼッタ(イラストレーター。『英雄コナン』シリーズや『火星』シリーズ、『ターザン』シリーズなどのヒロイックファンタジーの表紙を多数手がける)や、シド・ミード(工業デザイナー・イラストレーター。未来的な乗り物や建造物のデザイン画を多数描く。『スタートレック』『ブレードランナー』などにデザインを提供)などが、若いころは好きでした。
佐々木洋准教授

絵を描くことを仕事にしたい中高生へのアドバイス

――ご自身の経験から、絵を描くことを仕事としたい、現在の中学生・高校生には、何かご助言ありますか。
そうですね、見ることでうまくなるということがあるように思います。見方を学ばないと、どうしても上達に時間がかかってしまうことがあります。真剣に見ると、見るだけで絵がうまくなります。
――「真剣に見る」というのはどこをどう見ればよいのでしょうか。
まずは、分析的に見るということですね。一見無秩序に見えるもののなかに秩序性を見出す癖をつけるのが、一番見ること、描くことの上達が早いです。たとえば、生い茂る草むらは、単なる生い茂る草むらではなくて、日照の当たり方だとか、植物同士の競合などがあってその草むらの形ができている――こういう認知があってはじめて描けるようになるわけです。
――しくみを知って、頭の中で再構成するようなプロセスが必要なのかもしれませんね。先生のデスクの横には、人間の骨盤・腰椎の模型がありますが、これも人間の動きを描くときなどに必要なものなんでしょうか。
いまでは必須ですね。筋肉のつながりまで理解して描かないとダメです。いまはイラストレーションの水準がものすごく高くなっていますので、構造の理解というのはほとんど避けられないと思います。
――そうすると、人間の形や動きについては、美術解剖学を学んで描くという絵画芸術とイラストレーションも近くなっているということなのでしょうか。
そうですね、アカデミックな絵画教育のなかで、絵の描き方や見方の上達のために実用的なものを選び出してわかりやすく、学問学問しないで、プラモデルの設計図のようにわかりやすくしていければと考えて、授業も組み立てています。
――絵が上達したい、絵を仕事にしたいという中学生・高校生に対して、自分の興味関心だけにしばられないこと、真剣に、そして分析的に見ること、加えて何か助言するとしたら、さらにどういったことがありますか。
何よりも大事なのは、好きなものを見つけて集中することだと思います。ガンダムシリーズの富野由悠季監督もおっしゃっていますよね。小学生のころ一番集中したものを追いかけていくのが一番だと。好きなものを見つけて、そこに入り込んでから、先ほど申し上げたように、次に幅を広げて、狭い興味にとじ込もらないようにしたほうがよいと思います。


大学に来ることの意義と授業以外で取り組むべきこと

――なるほど。大学でイラストレーションや背景美術を学ぶということは、独学などと違ってどのような意義があるでしょうか。
一番重要なのは人間関係をつくるということだと思います。同じ趣味の人間がこれだけ集まる集団の一員になるということはなかなかないことなので、将来にわたって、ここ(吉備国際大学アニメーション文化学部)で築いた人間関係はとても貴重なものになると思います。大学に来ることの意義は、ここらへんが一番大きいように思います。
――大学でイラストレーションや背景美術を学ぶ学生が、イラストレーションや背景美術に上達したい、または、アニメーションやマンガのよい作品をつくりたい、さらにはプロになりたいと思ったとき、授業以外にどんなことに取り組めばよいでしょうか。
大事なのは最先端で絵を描いている人たちの絵をたくさん見ることがまずは大事ですね。いまの最先端は、インターネットのTwitterやPinterestで見ることができると思います。テクニックやハウトゥも公開されているので、そういう意味では、勉強のタネに困らない時代になりました。見るだけでなくて、実際に自分で手を動かして試してみる、自分がやったらどうなるか、自分の体で感じることが割と大事ですね。
それと、友達の作品を見ながら、みんながどんな風に頑張っているのかなと見るのも大事だと思いますね。同じ空気の中で作業している友達の作品を見ることが大事かなと。絵が出来上がっていく経過が見られますからね。こういうテクニックで描いているのかとか、こういう手順で作業をしてとても効率がよさそうだとか。友達から(言葉は悪いですが)盗めるものも多いと思います。
――TwitterやPinterestという場所の名前があがりましたが、手描きよりもコンピュータで描いている作品のほうが多いのでしょうか。
多いですね。でも、手描きでも相当に凝った作品があがっていることがありますね。手描きはやり直しが効かないことが多いので、絵に対する厳しさみたいなものは学べると思います。失敗したら描き直すしかないというような。ぼくは手描きから入ったんですけど、今の時代だったら無理に手描きから入らなくてもいいし、もちろん手描きでやってもいいし、自由度の高い時代になっていると思いますね。いずれも選択肢の一つではないでしょうか。
佐々木洋准教授

本学の学ぶ環境の良さについて

――本学を受験するかどうか迷っている中高生に何か助言をいただけないでしょうか。
私の授業では、一人一人の方向性を見て合わせるようにしますので、描き方を型にはめるようなことはしません。その人それぞれの一人一人の上達の具合とか、方向性を探すところから始めます。ですから、自分の方向性がわからないという方でも、ぜひ受験してみていただきたいですね。
――なるほど、そうすると、本学を受けるかどうかも含めて、自分の方向性に迷っているんだったら、本学がいいんじゃないの?ということですね(笑)。本学のよいところはどういうところだと思いますか。
学ぶ環境のよさだと思います。先輩たちもよい学生たちばかりですし、のどかな自然に囲まれた立地です。大学生活の不安がないのが一番ではないでしょうか。
――安心してイラストレーションやアニメーションなどの勉強に取り組めるのが一番ということですね。本日はお忙しい中ありがとうございました。
インタビュー:2020年6月8日
撮影:今村俊介、構成・インタビュー:大谷卓史
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