2019 年 8 月 18 日

『 高畑勲展 』を訪ねて

『PIXARのひみつ展』を見た後、続けて東京国立近代美術館に移動して、今度は『高畑勲展─ 日本のアニメーションに遺したもの 』を見てきました。

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こちらは館内での写真撮影は原則禁止なので画像として紹介できるものは少ないのですが、ハイジとアルムおんじが住んだ家がジオラマ風に再現されていて、これは撮影可能でした。

スマホや携帯をロッカーに預けた人たちが、悔しがることといったらありません。

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写真の右下には、ペーターの姿も見えます。

きっと子ヤギのユキちゃんだっているはずなんだが、う~ん、どれだ???

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精緻に作られた牛たちの姿は、なかなかリアルです。まるでアニメの一コマ。

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これは、ハイジになりきって写真を撮るための山小屋の室内です。
寝ているのはセントバーナードのヨーゼフなのだろうが、あまり可愛くない。

今回の展示会の意図は「演出家」としての高畑勲に焦点を当てることなのですが、アニメーションの新しい表現方法をどこまでも追及していった彼の軌跡がとても丁寧に紹介されています。

ですからアニメーションの展示会でありながら、企画書や、思考の痕跡が生々しい走り書きや、シナリオ案など、「描いたもの」よりもむしろ「書いたもの」に見るべきものが多いというのが大きな特徴でしょうか。
その点では、宮崎駿展とはかなり異なります。

「PIXAR展」では、高度なコンピューター技術に依拠したアニメーションの質と量の充実ぶりに正直圧倒されましたが、高畑勲と仲間たちによる日本の緻密な手描きのアニメを見ていると、どこかで劣勢を感じながらも頑張ってほしいと願わずにはいられませんでした。

なお、巡回予定によれば、来年の4月10日~5月24日までの間、岡山県立美術館でも同展が開催されるとのこと。

アニメーションを作ることの根本をずっと問い続けた高畑勲の思考の軌跡を辿ってみることは、学生らが制作する際の自らの足元を見つめ直す、きっといい機会になるだろうと思いました。

2019 年 8 月 18 日

『 PIXARのひみつ展 』を訪ねて

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今回、岡山で「トイ・ストーリー4」を見て、その感動のままに出かけたのが、東京・六本木ヒルズ展望台 東京シティ・ビューで開催中の『PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス』でした。

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この展示会の特徴は、ピクサー・アニメーションの主要製作工程を順に紹介し、訪れた人自身もそれが体験できるようになっていることです。
だから夏休み中は、もうたくさんの子供たちで一杯。

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このように写真を並べるといかにも学習のための展示という感じがしますが、実際はそうではありません。

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触れることのできるキャラクターや、一緒に写真を撮るためのキャラクター、さらには巨大なイメージボードなども、たくさん用意されているのです。

実際、楽しみながらピクサー・アニメーションの制作工程を体験できるようになっていました。

今回の展示を見て改めて思ったのは、「ピクサー」というはあのアップル創業者のスティーブ・ジョブズが買収して作った会社で、元々はCG制作用のコンピューターを専ら作っていた会社だったということ。

普通のただのアニメーション制作の会社だったら、きっとこのような発展の仕方はしなかっただろうなあ、と強く感じさせられたのでした。

2019 年 8 月 2 日

秋卒業の卒業研究発表会

昨日、9月卒業予定者の卒業研究発表会がありました。

秋に入学して秋に卒業するというのは、普通留学生だけになります。
そういうわけで、今回も全員が中国からの留学生でした。

卒業研究としては、作品でも論文でもどちらでもいいのですが、今回は全員が作品発表でした。

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実は、8月1日付けでアニメーション文化学科に、新たに佐々木洋先生という方をお迎えすることになりました。

佐々木先生の最初の仕事が、この卒業研究発表会での個々の作品に対しての講評ということになります。

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アニメ制作の現場でこれまでずっと活躍なさっていた佐々木先生の目に、学生作品がどのように映ったかとても気になるところです。

「どの作品にも作る必要性があって制作しているのか、ちょっと物足らなさを感じる」というのが、佐々木先生の最初の印象だったようです。
きっと、何か大事なものが欠けているということでしょうね…。

でも、学生らは今回初めて作品すべてを自分一人で作ってみて、自分の至らなさに本当に気が付いたのではないかと思うのです。
そういう意味では、卒業に際してやっとアニメーション制作の出発点に立てたということでしょうか。

2019 年 7 月 14 日

声優さんのトーク&アフレコ実演会を開催

今日は、夏のオープンキャンパスの第1回目でした。

たくさんの方にお出でいただき、本当にありがとうございました。

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エスカレーターも何だかお祭りっぽくなっていますが、何より今日の目玉は、「声優トーク&アフレコ実演会」です。

声優の河原木志穂さんと槙野旦さんに、わざわざ東京から来ていただきました。

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会場はいつもの教室なのですが、今日は賑わいと色合いが普段とは全然違います!

最初は、河原木志穂さんと槙野旦さんに、本学科の井上教授が様々な質問を投げかけるという形で始まりました。

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河原木さんはある程度ベテランの方なので、自分がこれまで体験されたことを優しく丁寧にご紹介くださいました。

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それに対して槙野さんは、どちらかというと現在修行中、売り出し中の方なので、その立場でのお話を正直にしてくださいました。

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実は、槙野さんは総社市のご出身で、最初は自分一人の力では食べていけず、時々ご両親に援助を求める電話をしていたとか・・・。

「東京に実家があったから、私は恵まれていたの」 とおっしゃっていた河原木さんとは、ちょっと違ったキビシイ都会の生活があったみたいですね。
そうしたお話も、若い人たちにはとても勉強になります!

休憩を挟んで、後半がいよいよ声優さんたちによるアフレコの実演です。

実演をやっていただくための素材は、実はアニメーション文化学科の学生が作った短編作品です。
セリフも、学生らが協力して自分たちの声で吹き込んだものなのです。

こうした作品に、プロの声を提供していただけるなんて、何だか申し訳ないような・・・。

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実際に映像を一度見ていただいてから、プロの方による即興のアフレコです。

スクリーンに映し出された映像を見ながら、まさにその場で瞬時に口を合わせる・・・。

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プロの声優さんが声をつけると、キャラクターたちの生命力が格段に増したように感じられました。
ああ、キャラクターが本当に生きている・・・。

驚いたのは、2回目、河原木さんと槙野さんがそれぞれの役柄を交換して声をつけた時のこと。

すると、セリフは同じなのに、キャラクターがまるで別人のようになっていました。
人格を表現する(変えてしまう)声の力を、今回ありありと感じさせてもらいました。

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最後は、会場にいらっしゃった方たちとの集合写真です。みんなとてもいい顔の素敵な写真になりました。

河原木さんと槙野さん、今日はプロの力を実感させていただく大変貴重な機会になりました。

今後もどうぞますますご活躍ください。高梁からも、みんな応援していますよ!!!

2019 年 7 月 12 日

ロシア研修団の受け入れ

7月5日と12日、今年もロシアから研修団がやってきてくれました。

研修団のメインの目的は、岡山外語学院で日本語を学ぶことですが、一部のアニメ好きの人たちはこうしてわざわざ本学まで足を延ばし、アニメの勉強をしてくれているのです。

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井上先生が語る日本のアニメの歴史を、ロシアの若い女性たちはどのような思いで聞いているのだろう。

ロシアで何気なく知っていた個別の作品が、日本のアニメの歴史を学ぶことでつながりをなし、理解を深めてくれたであろうか。

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キム先生の授業では、今回は12枚で描く人の「歩き」が課題です。

キャラクター制作、「歩き」の原画と中割り、トレース、スキャン、動画編集、上映と、一人ひとりがすべての工程を体験るのです。

きっと、アニメを見るのと作るのとでは、大違いだったでしょうね。
これからは、アニメを見るときの感じ方が少し違ってくるかもしれませんね。

どうぞ来年も来てくださいね。お待ちしています。

2019 年 6 月 23 日

7/14(日) 声優イベントを開催 (入場無料)

アニメーション文化学科としてこれまでずっとやってみたかったことが、今回やっと実現可能となりました。

高梁キャンパスに本物の声優さんを招いて、声優トーク&アフレコ実演会 を開催致します。

なおこれは、7月14日(日)、高梁でのオープンキャンパスと同時開催となります。

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これまでもオープンキャンパス等では、高校生の方から「声優になりたいのですが」とか、「声優の勉強はここでできますか」といった質問を何度も受けてきました。

でも残念ながら、本学科の今のカリキュラムでは声優養成は無理なのです。

そこでその代わりに、東京から二人の声優さん(河原木志穂さんと槙野旦さん)を招いて、
  ・声優の仕事とはどういうものか
  ・声優になるためにはどうすればいいのか
を中心に、話していただくことに致しました。

当日は、お二人のアフレコ実演もありますから、プロの実力を実際体感してみてください。
声優に関心のある方には、必見のイベントです。

なお、声優お二人の詳細については、こちらをご覧ください。
 <河原木志穂さん> <槙野旦さん

イベントチラシのDLは、こちらをご利用ください。

2019 年 6 月 20 日

勝間田高等学校で本学科アニメの紹介

6月19日(水)、県北の勝間田高等学校に「高校内ガイダンス」として本学科も参加させていただきました。

2年生の生徒さんを対象に、まんが・アニメ・声優についてお話をしてほしいとのご依頼があったのです。

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当日は、講義と併せて、動画「振り返り」の作画体験もしていただきました。

どうだったのでしょう。
おそらく初めての動画制作で、生徒さんたちはずいぶん緊張されたのではないでしょうか。

1枚1枚の絵が組み合わせれて実際どのような動きになるか、今はまだきっと出たとこ勝負ですよね。

でも、プロのアニメーターは理想的な動きをまずは頭で描きながら、それを1枚1枚の絵で再現しようと頑張っているのですよ。
これはまるで、NHK連ドラの「なつぞら」の世界ですよね。本当に。

ところで、県北出身の漫画家といえば、何といっても「NARUTO」の岸本斉史さんではありませんか。

私たちにとって、地方出身でもいつか本物になれることを実践して見せてくれた方ですよね(実は私も県北の出身!)。

高梁の学生たちよ。君たちも絶対に今の夢をあきらめるな!

2019 年 6 月 10 日

今年度の新授業を紹介② 「アニメーション実践」

今年度新たに始まった授業を紹介するコーナーの、第2弾です。

今回ご紹介するのは、「アニメーション実践」という授業。

どういう内容かというと、「ゲームエンジンであるUnityによる制作を中心に、デジタルソフトや3Dソフトの基礎を学ぼう」、というものです。

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担当の先生が、見本として自作のものを見せて下さっています。

学生たちはこれを一つの目標にしながら、基礎的な課題から順に一つずつこなしていくことになります。

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これは学生たちが、キャラクターが身につけるための小物を、思い思いに3Dソフトを使って作っているところです。
やがて自分が作るであろうキャラクターの姿をイメージしながら。

アニメーション文化学科は、岡山Unity勉強会と協力しながら、これまで4回にわたって「ゲームジャム」というゲーム開発の大会を高梁で開いてきました。

実は、そこで出会った方々のおかげで、今回紹介している「アニメーション実践」のモダンな授業内容が実現したのです。

地方にあっても都市部に負けないような、最新の技術を学べる人とモノの環境を作っていきたいと、私たちはいつも考えています。

2019 年 5 月 25 日

倉田先生撮影の映画が、ドイツで受賞!

夏の集中講義「映像概論」でお世話になっている倉田修次先生から、このような連絡がありました。

倉田先生が撮影を担当した短編映画「ひとりじゃない」が、ドイツ・ハンブルクで開かれた “2019 World Media Festival Television & Corporate Media Awards” で、銀賞を受賞したとのこと。

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受賞作品「ひとりじゃない」の予告編および詳細は、こちらをご覧ください。

<倉田先生からのコメント>

映画「ひとりじゃない」の舞台である宮城県登米市豊里町では、震災仮設や復興住宅で孤立、孤独死の問題が短期間の内に数件も発生し、地域の公民館がそれを防ぐために立ち上がることになった。

私たち大阪のスタッフ5人(監督、撮影、録音、メーク、照明)も、そのテーマは日本のテーマだと考え協力を惜しまず、監督のオリジナルストーリーを基に、3日間の強行スケジュールで撮影を行った。

9月21日、陸路片道900キロを丸一日かけて宮城県豊里へ、撮影は豊里住民の皆さんの全面的協力でやり抜きました。
食事は三食、朝早くから夜遅くまでいつも暖かいご飯を住民の奥様が用意してくださり、食材は全て地元の方の差し入れで、なんと豚一頭も…。

その映画は住民皆様の英気が溢れ、東北の映像フェスティバルでも賞を頂き、そして海外の賞も…。

映画が確実にひとりで歩き出し、色々な国や地域で気持ちを分かち合い、もはやひとりじゃない映画へと…。

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カメラを前にした倉田先生、右端は鐘江稔監督か。

何気に後ろに立っているのは、何と医師役のさとう宗幸さんではありませんか。

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左から、主演女優:小林涼子さん、倉田先生、監督:鐘江稔さん、主演:稲森誠さんです。

倉田先生
受賞、おめでとうございます。 9月の集中講義、よろしくお願い致します。

2019 年 5 月 17 日

今年度の新授業を紹介① 「音響演習」

本学科では、昨年度から新カリキュラムがスタートしたのですが、今回新2年生対象に「音響演習A・B」が開講されました。

講師は吉永拓未という方で、実は岡山を中心に活動し全国展開も狙っているという、現役のシンガーソングライターなのです。
ですから、音作りに関してはまさにプロ中のプロです。

授業では、アニメーション作品に使う歌であれ曲であれ効果音であれ、聴覚に関わるものならすべて扱ってくださいます。

本来2次元世界であるアニメーションに音が添えられると、空間としての豊かな広がりや深みが生まれてきます。
吉永先生の授業から、どんな音楽・音が生まれ、それがどのようにアニメーション作品に変化をもたらしてくれるか、本当に今からとても楽しみにしています。

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この日は、吉永先生が、ドラムスとベースを組んで準備してくださったものに、学生はそれぞれ好きな楽器でメロディを書き込んでいました。

さすがにアニメ学科の学生は、普段からテレビや映画のアニメ作品に触れているせいか、苦も無く自分なりの曲を作っているようでした。

この辺り、高齢者が目の前に近づいた人とは大違いです。→ 私のことです!