2023 年 3 月 16 日

備中県民局提案型協働事業実績報告会で学生が発表しました!

3月3日(金)、備中県民局提案型協働事業実績報告会で、アニメーション文化学部の学生が発表をしました。

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備中県民局提案型協働事業実績報告会の様子。委員の先生方の前でキムラくんもちょっと緊張気味?

アニメーション文化学部は、ほかの学部の先生や職員の方々にも支援を受けて、高梁市に本拠を置く一般社団法人クリエイティブシティ高梁推進協議会に協力して、ICTクラブ高梁や、ゲームジャム高梁の企画・運営等を支援してきました。

ICTクラブ高梁は、情報通信技術(ICT)にかかわるさまざまなツールを通して、世代を超えて地域の人が交流できる場を提供することを目指しています。そのために、備中県民局の助成を受けて、常設会場を設置し、いろいろな講座などのイベントを実施してきました。ICTクラブ高梁については、クラブのホームページをご覧ください。

また、ゲームジャム高梁は、短期間(2日間)で即席のチームでゲームを開発して、その出来栄えを競うイベントです。現役クリエイターやエンジニアと、学生・生徒が交流できる貴重な機会を提供しています。毎年吉備国際大学が後援して、国際交流会館多目的ホールで開催してきました。今年のゲームジャム高梁2022については、ブログ記事をお読みください。

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発表中のキムラくん。がんばれー!

アニメーション文化学部のキムラカズキくんは、ICTクラブ高梁のメンター(講師補助)として活躍してきました。今回、キムラくんは、この実績報告会で、ゲームジャム高梁も含むICTクラブ高梁の活動について報告しました。デジタルものづくりの機器や装置を備えた常設会場ができたこと、地域の子どもたちを受け入れる見学会を開催したこと、ゲームジャム高梁が盛況だったことなどについて、報告してくれました。

質疑応答では、2人がよく知る吉備国際大学の先生が委員にいらっしゃることがわかって、質問をした委員の先生ともども3人でびっくりするなどということがありました。質疑応答でも、キムラくんはしっかりと回答をしてくれ、「成長しているじゃん!!」と(お)は思った次第です。はい。

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実績報告会終了後の(お)とキムラくん。

こんな感じで、ICTクラブ高梁やゲームジャム高梁を通じて、学生の活躍の機会がますます増えることを願っています。

2023 年 3 月 3 日

高梁城南高校の特別講義を聴講しました!

2月17日(金)、ご紹介を受けて、岡山県立高梁城南高校の特別講義を聴講しました。特別講義の講師は、株式会社スタジオパブロの美術監督・藤野真里さんです。

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株式会社スタジオパブロの美術監督・藤野真里さんのご講演。高梁城南高校デザイン科の生徒さんが熱心に聞いていました。

株式会社スタジオパブロ(代表:秋山健太郎)は、2008年に設立された、主にアニメ・ゲーム・パチンコ等映像作品の背景美術製作を行う会社です。本学の冨田聡先生に教えていただいたところによると、日本のアニメーションの背景美術のパイオニアの一人である小林七郎さんの設立した背景美術会社小林プロダクションの流れをくむ背景美術会社とのことです。

藤野真里さんは、大学時代に日本画を学び、入社10年目で美術監督として活躍中です。美術監督を務めた作品としては、TVアニメ『どろろ』(古橋一浩監督、MAPPA/⼿塚プロダクション制作、ツインエンジン製作、2019年)、TVアニメ『Sonny Boy』(夏目真吾監督・脚本・原作、マッドハウス制作、松竹製作・配給)、TVアニメ『ダンス・ダンス・ダンスール』(境宗久監督、MAPPA制作、ダンス・ダンス・ダンスール製作委員会製作)があります。

藤野さんの大学時代からの仲良しのお友達が高梁城南高校デザイン科の先生で、この特別講義が実現したそうです。1年生・2年生が対象で、会場の視聴覚室はいっぱいでした。藤野さんが美術監督を務めた作品の大ファンという3年生も最前列にはいました。吉備ケーブルテレビの取材もあったので、高梁市とその周辺では特別講義の様子が放映されたと思います。

ご講演は、背景美術とは何かに始まって、美術監督のお仕事、そして、背景美術会社での働き方に関するものでした。

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アニメ制作にかかわる職種にはこんなものがあります。

背景美術は、セル画で動かすキャラクターなど以外の背景を描く職種で、30分の番組でだいたい300枚は背景を描かなくてはいけないそうです。

300枚も一人で描くとなるとたいへんですよね。だから、キャラクターなどのアニメーションもそうですが、何人もに手分けして背景を描くことになります。

さらに、上記の3つの作品を見るとわかるように、それぞれの作品の世界観(世界設定)にあった背景を描かなくてはなりません。『どろろ』はどこかおどろおどろしい暗い土着的な雰囲気。『Sonny Boy』は乾いた明るさが満ちた強烈な色彩の世界。『ダンス・ダンス・ダンスール』は少女漫画的なロマンチックな気分も漂うやわらかい雰囲気と鮮やかな色彩が調和した世界。一つの世界の中で背景の絵柄が変ってしまうと、そのアニメの世界観や雰囲気が壊れてしまいます。

こうしたそれぞれの作品世界を壊さないように、美術監督の一つの大事な仕事は、背景を担当する複数のスタッフからあがってきた背景をチェックして、統一した世界観・雰囲気を維持するように、必要があれば修正をして背景を仕上げることだそうです。

美術監督の仕事はこれだけではありません。作品の制作に取り掛かるのにあたって、監督が作品で実現しようとする世界観にあった背景を設計し、その原型となる背景を背景ボードなどの形で描き出すことがとても大事な仕事です。『どろろ』は戦国時代を舞台にしていますから、戦国時代のお城や建物、風俗を構成するさまざまな小物を描かなければなりません。そのためには、この時代(室町時代から戦国時代)のとりでが残る場所を訪ねて「ロケハン」したり、図書館などで関連する書籍・資料を調べて、作品に登場する建物の室内外の構造や見え方を決め、さまざまな室内の小物などを選び、背景美術のスタッフが参考にする背景ボードとしてまとめる必要があります。

背景の絵柄を決めていくにあたっては、監督やスタッフとのコミュニケーションも欠かせないそうで、『Sonny Boy』の背景を設計するにあたっては、夏目監督からアンリ・ルソーのようなという提案があり、また、秋山社長からはマチスのようにしたらという案をもらいました。こうしたコミュニケーションを通して、背景の雰囲気を決めていったそうですよ。『Sonny Boy』の大ファンで「もう3周か4周した」という生徒からの質問に答えて、こう話をされていました。

アニメーション業界というとものすごく忙しくてブラックな業界というイメージが強いものですが、藤野さんによると、だんだんと働きやすい業界に代わってきているとのことです。実際に、藤野さんの1日の生活を教えてもらうと、現在はコロナ禍の影響で、スタジオパブロは希望者にリモートワークを奨励するようになっており、だいたい自宅で仕事をされているそうです。仕事時間は、通常は朝9時から18時まで。忙しいときには残業もしなければなりませんが、そうではないときは、夜19時以降寝るまでは自由時間として使えているそうです。

アニメーション業界でも会社や働く形態(社員か請負かフリーランスか)、仕事内容、描き手の力によって、働き方はさまざまですが、だいぶ働きやすくなっている会社もあるようですね。

特別講義は質疑応答も含めて約1時間でしたが、生徒たちはとても熱心に藤野さんの話に聞き入っていました。質疑応答も、積極的でとても熱心な質問が出ていました。

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藤野さんに生徒代表からお礼のことばです。(お)も生徒さんといっしょに拍手でお礼を伝えました。

本報告を書いている(お)は、アニメーション文化学部の井上博明先生や佐々木洋先生、冨田聡先生からお話を聞くなどして、耳学問でアニメーション業界のことを学んでいますが、先生方のお話に、具体的な例から肉付けがされるような特別講義で有意義でした。

2023 年 2 月 12 日

特別講義を開催 : アニメ業界へ就職するためには

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先日、アニメ業界への就職を目指す3年生を対象に、冨田先生の特別講義が行われました。

3年生にとっては、この春休みをどう過ごすかが最後のチャンスに結び付くカギとのこと。

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冨田聡先生は、昨年10月に本学に着任された新しい先生です。

東京藝術大学大学院を修了し、その後は都心の専門学校にて描写力向上に関する全般的な教育を行いながら、多くの学生をアニメスタジオに就職させてきた実績をお持ちの方です。

今回は、そうした実践的な指導経験に基づいた講義内容だったのですが、使われた画像資料には著作権が関係してきますし、スライド上の文言もいわば冨田先生の企業秘密でしょうから、ブログで公開するには適しません。どうぞお許しを。

学生たちもそのことを十分理解した上で、一言も聞き漏らすまいと真剣に耳を傾け、ひたすらメモをとっているのでした。

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アニメ制作のデジタル化が進む現在、地方にも(岡山県にも)アニメスタジオが出来つつありますが、それでも多くのスタジオが東京に集中している事実に変わりはありません。

学生たちには、勇気をもって挑戦してもらいたいですね。

一番前に座っていた留学生たちには、岡山にいることも東京にいることも、実際何も変わりはないはずですよね。日本人学生以上の行動力を期待しています。

2023 年 2 月 4 日

卒業研究発表会を開催 多様な作品が一堂に 

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2月3日、卒業研究発表会が開かれました。
実技担当の前嶋先生と佐々木先生は、その準備が大変でした。ご苦労様でした。

論文、イラスト、アニメーション、実写動画、3DCG、絵本、マンガなど、研究内容は実に様々です。

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最後に、井上博明先生から全体的な講評をいただきました。

「自分の好きなものを自己満足的に描いているだけではだめで、見てくれる人にまずは何を届けたいのかを優先して考えることが大事」

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2022 年 12 月 19 日

学生企画によるクリスマス会が開かれました!

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金曜日の5時限目、アニメーション文化学科のクリスマス会が、学生の企画・準備によって開かれました。

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「シャロン」のケーキやシャンパン風の飲み物も用意されていて、なかなか豪華な感じです。
先生方からのあたたかい差し入れもありました。感謝!

その後、プロジェクターで映された対戦ゲームに学生も教員も一緒になって参加したのですが、その様子を他の人たちが盛り上がりながら観戦しているというのは、いかにも今風の光景でした。
なにしろ昔は、学生が座布団の上で落語をしたり、ギターを弾いて歌を歌ったりしていたのですから(実は、それもちょっと懐かしい気持ちがするのだが・・・)。

ここ数年コロナのためこうしたイベントがなかなか開けなかったのですが、今は人と人との距離が次第に近づき、関係がゆっくりと回復されつつあるようです。

それでも、マスクの学生とマスクを外して食べている学生が同時に写った写真を今この瞬間学科ブログに載せていいものかどうか、大いにためらいがありました。そのため結局、今回はすべて顔なしの写真で・・・。

学生活動が自由に行え、それらが自由に発表できるような時期が、本当に早く来てくれればいいのですが。

来年こそ、どうぞ良い年になりますように!

2022 年 11 月 30 日

3年土居みさきさんの小説が、「高梁市文学選奨」の佳作に選ばれる

アニメーション文化学科3年の土居みさきさんが書いた小説「動かぬ守り人」が、第18回高梁市文学選奨の「小説・随筆等」部門で、「佳作」に選ばれました。

なお、「佳作」の上の「入選」については、今回は「該当者なし」とのことでした。

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前列右から3人目が、土居さんです。

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授賞式開場は、「成羽複合施設 たいこまるプラザ」内にある「伊藤記念ホール」でした。

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この「伊藤記念ホール」というのは、高梁の名誉市民で、あの京セラの社長・会長を歴任された伊藤謙介氏の寄附により整備されたものだそうです。

そういう立派な会場での表彰式ですから、土居さんも今はちょっと緊張しています。

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小田教育長より、表彰状と記念の楯をいただきました。

読書好きの土居さんは、小学校の高学年ぐらいから小説を書き始めたそうです。
それでも、自分の書いたものが他人に読まれ、こういう形で評価されるのは今回が初めてとのこと。

もの書きはとても孤独な作業ですが、自分の言葉が他の人の心に通じた時の喜びは何ものにも代えがたいもののはすです。
土居みさきさんの今後の執筆活動を期待しています。

他の学生作品にも丁寧な講評をいただき、選者の片山ひとみ先生には大変感謝いたしております。

2022 年 11 月 15 日

県立高梁城南高校の文化祭「城南祭」見学しました!

昨年のクリエイティブフェスティバルなどで、アニメーション文化学部と協力関係にある岡山県立県高梁城南高校の文化祭「城南祭)に行ってきました!

城南祭開催の11月9日(水)は、天気もよくさわやかな秋晴れの日となりました。

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校門に設置された城南祭のゲート看板。パンフレットもそうですが、なかなか素敵なイラストとデザインですよね!

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城南祭のパンフレット。

電気科・環境科学科・デザイン科のほか、各同好会・部活・バンドなどのそれぞれ趣向を凝らした出し物に加え、校庭に設置されたテントでは、環境科学科が育てたヒラタケや、吉備中央町のブルーベリーを使って開発した甘酒・紅茶・クラフトコーラ・琥珀糖が販売されていました。

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環境科学科のひらたけ販売。

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環境科学科の、吉備中央町のブルーベリーを使った
甘酒と紅茶セット。

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こちらは、吉備中央町のブルーベリーを使ったクラフトコーラ。

デザイン科の出し物は射的やラインボーリングなど、縁日風に遊べるゲームセンター的な何か。電気科はブラックライトアートの体験コーナーなどを出品していました。

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備中高梁で毎年お盆に開催される盆踊り「まつやま踊り」の告知ポスター。力のこもったいい感じのポスターばかりですね。

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こちらが最終的に採用されたポスター。選りすぐりの作品だということがわかりますね。

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高梁の城下町の風景を描いた作品。観光案内にも、現代に残る風景の保存としても意義がありそうです。

当日訪ねた某Oは射的(結局3発とも外れで残念賞の10円お菓子)とラインボーリング(40円券もらってうまい棒とドキンちゃんのチョコと引き換えました)、ブラックライトアートを体験しました(ブラックライトアートは写真撮影を忘れてしまいました、ごめんなさい!)。

写真部の写真。さわやかな風景写真に加えて、踊るような夜の光をとらえた写真を買いました。

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デザイン科のどら焼きのパッケージの試作。

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デザイン科では、椅子の模型製作も。立体作品もつくるんですね。

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同じく立体作品の野菜の模型。

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こちらはアニメーション原画。デザイン科の授業でアニメーション制作が始まったそうですよ。

写真部でなかなかいいなあと思いつつ写真を買って、デザイン科の生徒さんたちの力のこもった作品を見て「うむむむ」とうなりつつ、あちこち覗いて回りました。時間切れで(午後からの授業の準備をしなくては(^^;)回れなかった部屋もたくさんあって、とても充実した文化祭でしたよ。

2022 年 11 月 13 日

今回の大学祭はまるで復活大作戦!

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11月5日、6日は、念願の大学祭となりました。

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アニメーション文化学科では、学生作品の上映・展示とあわせて、喫茶店も開店致しました。

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自家焙煎珈琲は「吉備ブレンド」と命名された、学生らの手によるまさに特製のコーヒーです。

ペペロンチーノの味は絶品で、職員の方も多数注文に来られました。

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例年であれば先輩から後輩へとそのやり方が伝達されるはずの大学祭ですが、今回はコロナによる中断を経験し、何もないところからの再出発となりました。

結果として、未来に繋がる立派な内容の催しになったと思います。関わった学生さんたちは、本当にご苦労さまでした。

2022 年 11 月 10 日

岡山県立高梁城南高等学校 デザイン科 を訪問

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昨日の夕方、岡山県立高梁城南高等学校のデザイン科を訪問させていただきました。

昨日は文化祭があったそうで、後片付けでお忙しいはずだったのに、ご対応下さった河原先生、どうもありがとうございました。

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今回の訪問の目的は、最近デザイン科ではアニメーションの制作も授業に組み込まれたとお聞きしたので、その様子を見学させていただくことでした。

マックのパソコンがずらりと並んだこの部屋は、実は中学生のあこがれともなっているとのこと。
確かに、そうだろうと思います。ワクワクしますよね。

液タブも用意されていて、将来に向けたデジタル作画の準備もしっかりなされているようですね。

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教室の机の上には、生徒さんたちの手描きの画が残されていました。
作画用紙にタップの穴もあけられていて、なかなか本格的です。気分はもうアニメーターですよね。

生徒さんたちが手描きで描いた画は、スキャナーで読み取ってデジタル化し、クリップスタジオを使って色を付け、最後はアフターエフェクトで編集しているそうです。

これは、大学で手描きのアニメを作る場合とまったく同じ工程です。
生徒さんらは歩きや振り返りの動きをアニメーション化しているそうですが、これも本学の1年生が最初に習う課題の一つですよね。

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こちらは、iMac PCが配置されているもう一つの教室です。後ろには、3Dプリンターも何台か見受けられます。

高校レベルで、アニメーションを作るための機器がこれだけ整備されていることにまず驚きましたし、デザイン科の授業の中のほんの一部分ではあっても、動画制作の基礎がきちんと教えられていることにも、本当に感銘を受けました。

私たちアニメーション文化学科としては、教員だけでなく、学生・生徒らの交流も図りながら、今後も地域のために協力・協働の関係が作っていけたらと願っているところです。

どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

2022 年 11 月 7 日

ゲームジャム高梁2022、3年ぶりにリアル会場でも開催でした!

10月22日(土)、23日(日)に、「ゲームジャム高梁2022」が開催されました。今年は7回目と、もう日本国内では老舗のゲームジャムの一つとなったと言えそうです。

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ゲームジャム高梁2022のチラシ。イラストはHANAさん。HANAさんは、昨年のゲームジャム高梁のイラストも描いて、大活躍です。どちらのイラストもかわいいし、元気がよくて素敵でしょ?ゲームジャムのロゴマークは、Dakshitha Prasanaさんのデザイン。こちらも本格的です!

アニメーション文化学部は、その第1回から教員・学生が協力してゲームジャム高梁を実現してきました。また、意欲ある学生たちがクリエイターとして参加もしてきています。

この記事では、ゲームジャム高梁2022の様子を伝えるだけでなく、ゲームジャムとゲームジャム高梁の歴史を少しふり返っておきましょう。

ゲームジャムは、クリエイターやクリエイター志望者が集まって、即席のチームで、数十時間~数日という短期間でゲームを制作するイベントです。多くの場合、ゲームジャム開催に際してテーマが発表され、そのテーマに沿った企画を頭をひねって絞り出し、ゲームに仕上げていくという形を取ります。

ゲームジャムは、2002年にアメリカで始まり、現在は世界中に広まって、毎年1月末から2月上旬には、世界中で同時にゲームジャムを行う「グローバルゲームジャム(GGJ)」が開催されます。

2002年に始まったとき、ゲームジャムは、「インディー」と呼ばれる大資本のゲーム企業には属さない、個人や小企業のクリエイターが、新しい発想のゲームを生み出すためのイベントでした。

その後、デンマークで、技術のレベルを問わず、初心者も含め300人を集める「ノルディックゲームジャム」をきっかけに、新しいゲームの可能性を広げる実験に加えて、クリエイター志望の若者や入門レベルのクリエイターなど、クリエイターを育成するイベントとして発展してきました。

つまり、ゲームジャムに参加し、経験することで、学生やクリエイター志望者が、現役のクリエイターやエンジニアとともに開発・制作活動をする中で、実際のゲームの企画・開発・制作・広報等の一連のプロセスを実地に・実践的に学ぶことができると期待されています。実際、大学の多くの情報系の学科や、ゲームや情報系の専門学校の学生が、先生の勧めで、学修の総仕上げとしてゲームジャムに参加するという例が多数あります(私たちのゲームジャム高梁でも毎年大学生・専門学校生が参加してくれます)。

岡山県高梁市でも、2015年にゲームジャム高梁が始まりました。日本にゲームジャムの運動を持ち込んだ一人である岡山理科大学の山根信二(現、東京国際工科専門職大学)先生と、高梁議会議員の石井聡美さんが、ゲームジャムにクリエイター育成と地域振興の可能性を見出し、高梁市と吉備国際大学など地域を動かして始まったのが、ゲームジャム高梁です。

吉備国際大学アニメーション文学部は、教員・学生が継続してゲームジャム高梁の準備・運営に協力してきました。また、クリエイター・開発者を目指す学生が、ゲームの制作・開発チームの一員としても参加してきました。

とくに、井上博明教授は、第1回目からゲームジャム高梁実行委員会委員長を務め、ゲームジャム高梁の運営を進めてきました。さらに、2019年に一般社団法人クリエイティブシティ高梁推進協議会が設立されて、委員会から運営主体が移管されてからは、井上先生は審査委員長として活躍しています(今年も審査委員長を務めていただきました)。

2019年からは、eスポーツサークルの顧問(村上勝典講師)と学生がゲームジャム高梁の運営にかかわるようになり、とくに、2021年、今年と、ゲームジャム高梁のオンライン配信では、同サークルの学生たちが大活躍をしています。また、昨年はVTuberのSugarさん夕凪ユナさんが参加し、ユナさんは今年も配信の司会・コメンテーターとして協力してくれています。

今年は、高梁市にある岡山県立高梁城南高校のデザイン科の先生も、ゲームジャム高梁をボランティアスタッフとして支援してくださいました。地域の人々のゲームジャム高梁に対する関心も広がっているようです。

コロナ禍の2020年は中止となりましたが、2021年の完全オンライン開催を含め、今年のゲームジャム高梁2022で、ゲームジャム高梁は7回目を数えることになりました。

ゲームジャム高梁2022は、リアル会場の吉備国際大学国際交流会館多目的ホールに加え、オンライン会場も設けるハイブリッド形式で実施されました。リアル会場は20人、オンライン会場には14人がクリエイターとして参加し、各地で行われるゲームジャムとしては相当に大きな規模のものとなっています。

今回は、とくに中学生や専門学校生が多数参加し、ゲームジャムがクリエイターを育てるイベントだということがあらためて認識されました。中学生は、1日目の企画発表会で大活躍し、その後も最後までゲームジャムにつきあってくれました。今年は、穴吹カレッジグループの中四国の専門学校の学生たちが多数参加し、ベテランのクリエイターやエンジニアとともに、それぞれの知識や技能を発揮しました。

7回を重ねることで、ゲームジャム高梁には、岡山Unity勉強会(面田高章会長)をはじめ、広島Unity勉強会(中奥貴浩会長)、讃岐GameN(渡辺大代表)など、多くのクリエイター・エンジニア集団が参加・協力し、中四国のインディークリエイターの重要な交流拠点となってきました。また、岡山eSports連合(本村哲治会長)の協力も得ています。

ゲームジャム高梁2022は、10月8日に開かれた事前勉強会から、「ペラコン」を開始、ゲームジャム当日に投票で制作するゲームとチームを決めるという方式を取りました。

「ペラコン」とは、A4「1枚ペラ」の企画書をつくり、その企画書の「『コン』テスト」を行うことを指します。自分の制作したいゲームの面白さを伝えるため、A4の紙1枚に自分の制作したいゲームのアイデアをまとめるので、企画をよく練って、ゲームの面白さをわかりやすくまとめるというトレーニングになります。

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「ペラコン」の例。Denimさん提案の「ZOMINO!!」のペラコン。

ぼんやりとした「おもしろそうだな」と思えるゲームのアイデアを考えるのは多くの人ができますが、これを実際にみんなで制作しようと考えてもらい、実際におもしろいゲームに仕上げるためには、説得力がありわかりやすい企画書をつくる必要があります。この企画書を制作するというトレーニングが、「ペラコン」ではできるわけですね。また、ベテランのクリエイターやエンジニアも参加するので、彼らの企画書がクリエイター志望の学生たちのお手本になるわけです。

ゲームジャム当日は、ゲームジャム高梁2022のスケジュール発表と、審査委員長挨拶、その後ペラコンによるチーム分けと進んで、今年の開会宣言です。吉備国際大学国際交流会館のリアル会場のチームは3つ、オンラインチーム2つに分かれて、ゲーム制作が10時30分過ぎには始まりました。

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吉備国際大学国際交流会館リアル会場の全景。

先ほども書いたように専門学校の学生が多数、中学生も加わっての開発・制作ですが、まずは役割分担。中学生たちは、1日目最後に行われる企画発表が役割になりました。専門学校生はそれぞれの得意に応じて、プランナー、プログラマ(コーダー)やデザイナー、アニメーターなどの役割を担います。ベテランのクリエイターやエンジニアが引っ張る形で制作・開発を進めるチーム、若い人たちに先行させて、ベテランがフォローに回りつつ全体を動かしていくチームなど、チームのマネジメントの仕方もそれぞれです。

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チーム「釣り猫レポート」の役割分担、企画を練ったホワイトボード。思考と討論の軌跡がまざまざと残ります。

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こちらは作業用チェックリスト。こうやってチームの皆が見えるところにチェックリストを掲げることで作業進捗が目に見えるようになります。

ゲームジャムをよくよく観察すると、チームのマネジメントも含めていろいろと学べることが大きいです。また、参加したクリエイターやエンジニアたちの力量がとても大きいことにも気づかされますね。

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1日目のお昼ごはん。炊き込みご飯とけんちん汁です。運営を仕切っている某Oが見積もりを間違えて、ものすごーくたくさんできてしまいました(–;

4年生の王勇くん(中国出身)、3年生のオミヒさんの吉備国際大学の留学生2名も、今年のゲームジャム高梁には参加しました。二人ともゲームジャムを楽しんでくれたようでようで、教員としてはとてもうれしいです。

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王勇くん

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オミヒさん

1日目夕方17過ぎに始まった企画発表会では、オンライン2チーム、リアル会場3チームの計5チームのゲームが出そろいました。ゲームジャム高梁2022のテーマは「集まる」。いろんなものが集まりましたよ。

最初に、オンライン2チームのゲームを紹介します。チーム「骨付き鶏」のゲームは、「救出!ぴよぴよ大作戦」。障害物をよけながら、制限時間以内に、迷子になったカルガモのひな鳥を「集めて」、巣に連れ戻すというゲームです。カルガモのイラストも会場で話題ですよ。

「うさぎランチ」チームは、「鷺(さぎ)の昼食」を制作しています。もともとの企画段階では、鷺(さぎ)が食べ物を食べ歩く対戦ゲームでしたが、企画を検討する中で、スコアアタックを競う一人ゲームへと発展したそうです。企画が議論して検討する中で育っていく「生き物」だということがわかりますね。「集まる」とのかかわりは、ちょっとだけ謎です。

次に、吉備国際大学国際交流会館のリアル会場で奮闘中の3チームのゲーム。

猫と旅する小説にちなんでチーム名をつけた「釣り猫レポート」は、「吾輩は釣り猫である」という釣りゲーを制作しています。猫が船から釣り針を下ろして、流れてくる魚を釣り針に「集めて」たくさん釣り上げるゲームです。でも、釣り針に魚が集まれば集まるほど、釣り針の動きが鈍くなったり、障害物に邪魔されたりと、高得点を取るのも簡単ではないようです。

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企画発表会の様子。チーム「釣り猫レポート」の「吾輩は釣り猫である」のプレゼン。

チーム「ホワイトドラゴン(仮)」(ほわいとどらごんかっこかり)の「ミラクルデュエル」は、奇跡の力・運を「集めて」魔王を倒すゲームです。お互い順番に殴り合うコマンドバトルですが、攻撃が当たる「運」をアイテムで集めていくと、魔王を倒すまで強くなるかもしれない⁈そうです。企画発表会では、中学生が活躍しました。

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企画発表会で活躍の中学生たち。

チーム名「サバイバー」は、「ZOMINO!!」を制作。ゾンビ+ドミノで、「ゾミノ」ですね。わらわらと「集まってくる」ペラッペラなゾンビを倒すサバイバルゲーム。ドミノ倒しでまとめて倒すのがだいご味で、できるだけゾンビを引き付けるのが、ドミノ倒しのコツ。スリルと爽快感が期待できますね。

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企画発表会の様子。チーム「サバイバー」の「ZOMINO!!」のプレゼン。

企画発表会後は、いよいよプログラミングです。夕方からプログラミングやキャラクターのデザインなどを開始したので、夕ご飯ができあがっても、みなさんなかなか立ち上がりません。コーディング・デザインなどなどに夢中です。

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1日目夕ご飯のカレーライス。こちらもたくさん。ゲームジャム高梁は、手作りのごはんのおいしいゲームジャムとしても有名です。

夕食が終わってからも、さらに奮闘が続きます。オンライン会場では、ディスコードというオンライン協働環境・会議システムを活用して、ボイスチャットによる音声でのやりとりもふくめて、企画の意識合わせをして、お互いの進捗を確認し、できあがった要素を共有しながら、協働作業が続きます。21世紀ではごく当たり前になる遠隔地の仲間とのオンラインでの協働作業環境も、オンラインのゲームジャムならば実践的に体験できるわけです。

リアル会場では夜遅くまで多くの人が会場に残って開発をがんばっていました。夜中1時に会場担当某Oが寝袋に潜り込んで眠ったときも、もくもくと制作・開発を続ける参加者も多数いましたよ。

翌朝も早くから制作・開発が続きます。8時に会場の国際交流会館を開けるときには、制作・開発活動が少しずつ動き出しました。

クリエイティブシティ高梁推進協議会の石井代表やアニメーション文化学部の学生たち(アニメーション文化学部の卒業生も)は、1日目からごはんづくりに取り組んできたのですが、2日目もごはんづくりに精を出します。食べ盛りの若者たちも満足してもらおうということで、4食合計300円という破格の値段で食事を提供しています。

1日目、2日目と、たくさんの見学者・来訪者がありました。吉備国際大学の1年生向けの授業「課題解決演習」では、ゲームジャム高梁や、やはりクリエイティブシティ高梁推進協議会が取り組むICTクラブ高梁などの地域活動をもとに、コンテンツ制作を通じての地域振興を考えます。この1年生がやってきたほか、地域のテレビ局や新聞の取材もありました。また、地域の子どもたちやICT(情報通信技術)に関心がある方々、岡山県立高梁城南高校の校長先生も会場を見学してくださいました。

開発・制作は順調に進んで、12時には体験版がディスコードでリリース。しかし、こちらも某Oのせいで(^^;、参加者だけしか遊べないという困った事態に。とほほん。

16時に最終版がリリース予定だったのですが、いろいろあって、結局この日はリリースは延期となって、17時からの成果発表会を迎えました。各賞発表はまた後日…というオチ。

その後はみんなで原状復帰のお片づけ。参加者の皆さんもたいへん疲れているでしょうに、とても協力的で、ごっちゃり残されていたたくさんの機材(子どもたちがゲームで遊んだり、配信で活用されたりしたさまざまな機材)もきれいに片づけることができました。ゴミもきれいに分別がされていて、最後始末する某Oも「ありがたやー」のひとことです。また、eスポーツ同好会顧問の村上勝典先生は、2日目午後から静かに目立たず手際よくいろいろなものを片づけてくださっていて、たいへん助かりました。

ICTクラブ高梁に移ってから、学生たちがつくった料理で、大人の参加者たちは後夜祭を楽しみました。

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ゲームジャム高梁2022で開発されたゲームは、Unityroomに順次アップロードされます。Unityroomにアクセスしたら、「#ゲームジャム高梁2022」で検索してみてくださいね

ゲームジャム高梁終了後、参加した子どもたちの保護者の皆さんから楽しかったという子どもたちの声が届いたのがとてもうれしかったですね。子どもたちの将来の希望は変わるかもしれませんが、このゲームジャムが彼らや学生たちの未来を後押ししてくれる何かを残してくれるといいなと思います。ゲームやアニメーション、アプリ開発などの起業や企業誘致による地域振興へとつながることも期待。しかし、某Oが学生たちに、デジタルゲームや映像・アニメなどのクリエイティブ産業の都市として育った福岡市を例に説明したように、地域振興がどんな形で結実するかは偶然にも左右されるので、まだわかりませんね。

こうして、今年のゲームジャム高梁も、たくさんのみなさんのご理解・ご協力・ご支援のおかげで無事に終わることができました。参加者のみなさん、スタッフの学生や地域の人々が楽しんでくれたのが、何よりも一番の収穫です。